防衛・安全保障

安倍首相は本当に「陸自の日報隠し」を知らなかったのか

これで文民統制ができるとはとても…
布施 祐仁 プロフィール

「裸の大将」か

この答弁が事実とするならば、陸上自衛隊に南スーダンの日報がある事実を安倍首相が知ったのは、特別防衛監察の結果が出てからということになる。これを自衛隊の最高指揮官である首相による文民統制という観点からみると、極めて深刻な構図が浮かび上がる。

陸上自衛隊トップの陸上幕僚長と防衛省事務方トップの事務次官は、2017年1月の段階で、陸上自衛隊に日報が存在することを認識していた。さらに、これまで「報告を受けていない」と説明してきた自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長も、同じく1月に報告を受けていたことが最近判明した。

つまり、防衛省・自衛隊の最高幹部は全員、早い段階から陸上自衛隊に日報があることを知っていたのである。にもかかわらず、それから半年間、最高指揮官である安倍首相にはその情報は届かなかったのである。これが事実ならば、安倍首相は完全に「裸の大将」であったということになる。

 

特別防衛監察の結果に基づけば、安倍首相や稲田大臣に陸上自衛隊に日報が保管されている事実を報告せずに隠蔽を図った「主犯」は、黒江事務次官ということになる。かつての日本なら、将軍を半年間も騙していたのだから、間違いなく切腹ものだろう。安倍首相も稲田大臣も黒江氏に激怒していいはずだが、そういう言葉は一度も聞いたことがない。

それどころか、この件で引責辞任した黒江氏を、2ヵ月後には、官邸直轄の国家安全保障会議の事務局に新たに「国家安全保障参与」というポストを設けて再起用した。自分を半年間も「裸の大将」にした主犯格の人物に対して、こういう扱いをしていたら、文民統制など機能するはずがないだろう。実に、不可解な人事であった。

はたして、安倍首相は本当に、陸上自衛隊に日報が保管されている事実を最後まで知らなかったのだろうか。本当に知らなかったとしたら、「文民統制」を担う自衛隊の最高指揮官としてふさわしくないと言わざるを得ない。しかし、知っていたとしたら、安倍首相自身が隠蔽に関与していたことになる。

もしフジテレビが入手した「メモ」にある通り、稲田大臣が2月の段階で陸上自衛隊に日報が存在する事実を知っていたならば、当然、安倍首相にも報告していただろう。

これはあまり知られていないことだが、安倍首相が衆議院の本会議で、陸上自衛隊が日報を廃棄したことを肯定するような答弁をする直前まで、陸上自衛隊は情報公開への対応が不適切であったことを認めて、日報を保管していることを公表しようとしていた。しかし、誰かがそれを止めた。そして、その結果、安倍首相は国会で事実に基づかない答弁をしたのである。

これは非常に重大なポイントであるにもかかわらず、陸上自衛隊が公表しようとしていた事実も、誰がそれを止めたのかも、特別防衛監察ではなぜか一切触れられていない。

現在問題になっているイラク日報の問題は、南スーダン日報の問題と連動している。イラク日報問題の真相を解明するためには、いまだ不可解な点が多く積み残しになっている南スーダン日報問題の真相解明が不可欠である。