朝鮮労働党創建70周年を祝してマスゲームを繰り広げる学生たち(2015年10月、写真:フジテレビ)
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金正恩は、こうして北朝鮮の若者に「忠誠心」を叩き込んでいる

本当は核開発なんて、したくないのに

北朝鮮の子供たち、若者たちは、いったい何を学び、どんな夢や目標を持って生きているのだろうかーー。

新著『テレビに映らない北朝鮮』で、知られざる北朝鮮国民の暮らしを克明にレポートした、フジテレビ報道センター室長・鴨下ひろみ氏。北朝鮮一のエリート校・平壌第一中学校の取材で目にしたのは、驚きの教育内容だった。

サイバー攻撃能力はハイレベル

平壌一中は日本の中学・高校にあたり、北朝鮮全土から優秀な学生が集う。北朝鮮の名門中の名門として有名で、数学の国際オリンピックで優勝した学生もいるというから、世界的に見てもかなり高レベルの学校と言える。

優秀な学生として難関を勝ち抜き、平壌一中に進学した生徒たち。この学校に入るのは大変だったのではないかと聞くと、「とても苦労しました」「はい、一生懸命勉強しました」と答えた。

照れくさそうに笑う学生たちの素顔は、ごく普通の若者に見える。だが、彼らは未来のエリートとして核兵器やミサイル開発、さらにはサイバー攻撃などの分野で要職に就く可能性が高いのである。

「サイバー攻撃は核・ミサイルと共に軍の打撃力を担保する万能の宝剣だ」(金正恩)

金正恩が「万能の宝剣」と言うだけあって、北朝鮮のサイバー攻撃能力は相当ハイレベルだ。

韓国の情報機関・国情院などによると、朝鮮人民軍傘下の偵察総局のさらに下に、6800人規模のハッカー部隊が存在する。

その中核となるのが「121部隊」だ。幼い時から英才教育を受け訓練を積んだ精鋭部隊で、中国を中心に海外にも活動拠点がある。約1100人が海外で活動しているという。

アメリカのソニー・ピクチャーズエンタテインメントへのハッキングや世界で同時多発的に発生した「ランサムウェア」という身代金要求型のウイルスを使用したサイバーテロは、この121部隊の犯行と見られている。その能力はアメリカ中央情報局(CIA)に劣らないとの指摘もあるほどだ。

 

核ミサイル開発はイヤだ…

最近では金融機関を狙ったサイバーテロで巨額の外貨を強奪しているとの疑惑がもたれている。16年にはバングラデシュ中央銀行が不正送金で8100万ドル(約92億円、当時)を強奪されたほか、エクアドルやベトナムなど世界18カ国の銀行で〝サイバー銀行強盗〟の被害が相次いだ。

北朝鮮も子供の教育には非常に熱心だ。親は子供をいい学校に入れようと必死だし、受験競争も熾烈だ。

幹部の子弟などがコネなどを使って名門校に入学するケースもあるというが、この平壌一中の場合は、入学してから授業についていけるかが問題になるので、そうしたコネも利かないという話だった。

ただ、トップクラスの学生となると、また別の問題が生じる。エリートとして優遇はされる一方、核やミサイルの開発に従事させられ何年もの間一般社会から隔離されてしまうのだ。軍事機密が外部に漏れないようにするための措置だが、人間的な生活はできなくなる。

それが嫌なので、わざといい成績を取らないようにする学生もいるそうだ。優秀であればあるほど、自由な生活が送れない。北朝鮮エリートを悩ませるジレンマがそこにある。

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