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「本を造る工程」を知りたくて、印刷所の仕事人に密着し分かったこと

身近なのに、知らないことばかり

印刷機はデカく、紙が柱のようにそびえ立つ

忘れもしない2015年の2月、よく晴れた土曜の昼下がりでした。講談社の担当編集者・鍜治佑介さんと打合せをしていた時のこと。

「本がどうやって造られているか、あまり知られてないんですよね」

そんな鍜治さんの言葉がきっかけでした。

鍜治さんとの話で、本が完成するまでの印刷・製本に多くの工程が存在すること、印刷会社の営業担当の方が刊行日まで時に綱渡りのような進捗管理をしていることを知りました。

それまで私は、既に何冊かの単行本や文庫本を刊行していました。しかし編集者さんに原稿を送り終えた後の印刷・製本に関してほとんど無知でした。

物語を書く人間なのに、ちゃんと知らなかったのです。

これは何かの縁に違いないと直感し、本造りに携わる人の物語を書こうと決めました。講談社と縁の深い豊国印刷に取材させていただけることとなり、企画当初に付けた仮題は『とよ物語』でした。

同年5月、鍜治さんと共に初めて豊国印刷にお邪魔しました。午前中に本社を、午後は埼玉県のふじみ野の工場と三芳町の暁印刷、板橋区の製本会社・国宝社を見学する一日がかりのコースを組んでいただきました。案内してくださったのは営業第二部の田島洋樹さんと村井文一さん。奇しくも私と同じ昭和52年生まれのお二人でした。

本造りの各工程に対する興味とは別に、同学年のお二人がどんな仕事をされているか、知りたいと思いました。

本社では、パソコンで本のレイアウトなどを制作するDTP(デスクトップ・パブリッシング)の仕事などを見学しました。コンピューター化が進んだとはいえ、人の技術があってこそ成り立つ仕事です。

 

小説の原稿が本のレイアウトに整えられてゆく様、漫画の絵と台詞を画像処理ソフトで重ねる作業……見るもの全てが目新しく、私は逐一立ち止まって質問し、各担当の方が分かりやすく説明してくださいました。

しかし、田島さんと村井さんに切り出せない質問がありました。

昭和52年生まれは就職氷河期に社会へ出た世代です。私は学生の頃、たくさんの会社の採用面接に臨み、たどたどしく「志望動機」を述べては落ち続けました。自業自得ですが、嫌な思い出です。そのせいか、同学年のお二人に「なぜこの仕事を選んだのか」という、志望動機的な問いを投げることに抵抗がありました。

本社を出て工場へ向かう車の中で機を窺うも、なかなか訊けません。そんな中、以心伝心か、鍜治さんが訊いてくれたのでした。