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「私はもう終わり」人生を諦めはじめたエリート銀行員が急増中のワケ

特に、バブル採用組に顕著なようで…
メガバンクの大幅な人員削減に、店舗の統廃合……。今、日本の銀行に、一体何が起こっているのか。そして、将来に漠然とした不安を抱えるエリート銀行員たち。激変する組織のなかで、これから彼らに求められることとは——。『銀行員はどう生きるか』の著者・浪川攻氏が深層に迫った。

動揺するバブル採用組

メガバンクの中堅銀行員たちが浮足立っている。最近、取材で会っても、「私はもう終わりですから」という言葉があいさつ代わりに飛びだす。「銀行員人生が終わります」という意味である。

昨年11月、3つのメガバンクグループが、生き残りを賭けた構造改革を明らかにした。

このうち、三井住友グループは明言していないものの、三菱UFJ、みずほの両グループは人員削減する具体的な人数を公表している。三菱UFJは2023年度までに6000名程度、みずほは2026年度までに1万9000人を削減するという。

ずいぶんと悠長な話である。変化が激しいこの時代に、なぜ、これほどの長期ビジョンしか描けないのか――。答えは簡単だ。大量の退職者を新卒採用で穴埋めせず、「自然減」で対応するという発想だからだ。

量的金融緩和やマイナス金利政策により、いかに経営環境の悪化が著しくとも、社員は着実に歳を重ねる。したがって、退職者数は確実に予想でき、あとは新卒採用を絞り込めば、自然と人員数は減っていくという話にすぎない。

それでも、銀行員たちはひどく動揺し、戸惑っている。それはいま、銀行独特の退職制度に対する信頼性が大きく揺らいでいるからだ。

 

かねて銀行業界は、独特の新陳代謝のしくみを作り上げてきた。

銀行員の定年退職年齢は60歳だが、そのほとんどが10歳ほど前倒しで退く「早期退職制度」が連綿と運営されていて、その代わり、去りゆく者には第二の職場=「セカンド・キャリア」が用意されてきた。行き先は銀行が数多く抱えている子会社や関連会社、そして取引先企業である。

今回の人員削減は、おもにこのしくみをフル回転させるにすぎない。それにもかかわらず、銀行の経営陣があえて強調するのは、まもなく銀行では膨大な数の銀行員がこの早期退職の年齢に達するからだ。

彼らは、金融危機の前のバブル時代に行われた大量採用世代――俗に「バブル採用組」と呼ばれる銀行の〝団塊世代〟である。

今後、この団塊世代がいっせいにセカンド・キャリアに向かっていくわけだが、銀行員たちはセカンド・キャリア制度のキャパシティ・オーバーを感じ始めている。「取引先企業の受け入れが次第に厳しくなっている」(中堅銀行員)からだ。