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ハリル流を受け入れられなかった、日本代表の「ナイーブな一面」

問題はどこにあるのか?
小宮 良之 プロフィール

西野監督に決まった内部事情

では、監督交代のタイミングや西野監督という選択は正しかったのか?

正しいはずはないが、事情はあった。

西野技術委員長は、ガンバ大阪などで多くのタイトルを取った「Jリーグ最多勝」の
指揮官で、もともと監督業の人である。

技術委員長の仕事は監督をサポートし、根回しをし、必要なら新たな監督と交渉し、招聘すること。そうした仕事をした経験はなかった。タイミングもなにも、彼が監督になりかわるか、入閣していたコーチを引き上げるくらいしか、術がなかった。

それが、解任の決定が先延ばしになり(例えば昨年10月のハイチ戦でのドローや、12月の韓国戦での敗北は契機になり得た)、時機を失い、選択肢も他にはなくなった理由である。

そもそもハリルホジッチを招聘したのは(アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレも)、前技術委員長である霜田正浩氏だ。

しかし霜田氏は昨年末で辞任(今シーズンからJ2のレノファ山口の監督に就任)。協会内には、外部から監督を連れてこられるだけの人物はいなかったし、このタイミングで外国人の有力監督を連れてくるのは(日本人選手の情報量が少なすぎて)、たしかにリスクが高すぎた。

タイミングも、人選も、これしかなかった。今となっては。

問題の核心は、もっと以前の人事マネジメントにあったと言える。その点で、協会のガバナンスが不足していた、との意見はその通りだろう。組織の機能性が欠落していたと言わざるを得ず、協会は糾弾を避けられない。

ただ組織として問題はあったとしても、勝負に関してどう転ぶかが問われるのは、これからだ。

 

「長期政権」のほうが強いのか?

代表監督という仕事は、これまで書いてきたように特殊である。戦術以上に、チームとして一枚岩になれるか。同じ選手で時間をかけて戦術、システムを練り上げるクラブチームとは、まるで違う事情がある。

無論、時間をかけて作ってきたチームには大きなアドバンテージがある。

例えば2016年からスペイン代表を率いるジュレン・ロペテギ監督は、2010年の世界王者、2012年の欧州王者の主力選手たちを大きく入れ替えていない。

新たな血を少しずつ入れながら、2年間でチームを熟成。そのコンビネーションは世界最高のレベルにある。今年3月、強豪アルゼンチン代表とのフレンドリーマッチでは、6−1で大勝し、チームとしての完成度の差を見せつけている。

一方のアルゼンチン代表は、このスペイン代表戦でリオネル・メッシを欠くハンデを負っていた。前回大会から3人目の監督となる名将ホルヘ・サンパオーリが率いるも、ワールドカップ南米予選でも大苦戦し、チームとしての完成度は著しく低い。とりわけ、ディフェンスの綻びは明らかである。

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これら二つの強豪を照らし合わせてみても、一人の監督が続けて指導してきたチームには優位性があると言えるだろう。

それなら、ハリルホジッチが続投したほうが良かったのでは——それも一理ある。

断言できるのは、ハリルホジッチが間違った戦略を示していたわけではない、ということだ。

「守りを充実し、速く攻める」。それも一つの戦い方であって、また日本が採り入れる必要があるものだった。また、原口元気、久保裕也、井手口陽介、槙野智章など「申し子」とも言える選手も出している。

しかし、指導のプロセスで求心力を失っていったことも間違いない。それにはハリルホジッチの、思ったことをすべて口にしてしまう正直さと頑迷さもあっただろう。日本人を見下すような発言も目立った。

「日本人は日本人の戦いがある」

結局のところ、その思いが、急転直下の監督交代につながった、と見るべきだろう。