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リハビリ中に父が看護師を罵倒し始めたら、家族はどうすべきか

現役証券マン「家族を探す旅」【11】

現役証券マンにして作家の町田哲也氏が、実体験をもとにつづるノンフィクション・ノベル『家族をさがす旅』。

​一時は生死の境をさまよい、入院中の78歳の父。2度の手術をへて体力と認知能力が落ちた父は、少しずつリハビリに挑むようになったのだが…。

不安定な精神状態

「昨日、市の調査員が来たのよ」

母が思い出したようにいった。

「介護の件?」

「介護認定をするには、介護認定調査員が本人に会って確認しなくちゃいけないんだって」

「どんなことをしたの?」

「簡単なヒアリングよ。名前とか生年月日とか。でも意識がもうろうとしてるみたいで、年齢はいえなかったね」

ぼくは、ベッドで目を閉じる父の表情を見た。大きな変化が、父のなかではじまっているのかもしれない。

「昨日も、自分の身体はもう死んでるからどうなってもいいんだって。死ぬのがわかってるからって、リハビリもしたがらないのよ」

「自分が衰えていく認識はあるんだ」

「そうみたいね。と思えばいきなりみんなに会いたいっていって泣き出したり」

不安定な精神状態が続いていた。

 

病院からは、個別に相談員を紹介されていた。父の担当は増田さんという方で、経験も長い。

今は医療ケアが不可欠な救急型病院に入院しているが、長くは入院できないという。時期が来たら療養型病院に転院することが望ましく、胃の融合手術のときは病院に戻り、手術後に安定したら自宅に戻るか施設への入所を考えることを提案された。

増田相談員は、自宅近くの療養型病院もさがしてくれた。療養型病院の入院には、1ヵ月に16万円程度の費用がかかる。内訳は医療費5万7000円、食費3万円、他はリース料やおむつ代だ。候補になる病院の選択肢は与えられたが、まだ現実のものとして考えることができなかった。

看護師に暴言を投げつける

メディカルセンターでは、個別の看護師を患者につけるのでなく、何人かの看護師が日替わりで担当するシステムを取っていた。リハビリも同じで、体力が衰えている父は思い通りに身体が動かないことが多く、トラブルが起きやすかった。

まずはじめたのは、軽い柔軟体操だった。車椅子で廊下に出ると、降りて一メートルほど歩く。

まだ一人で歩くことはできない。スタッフが足の曲げ伸ばしをサポートし、立たせてくれる。

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たいてい父は眠そうだった。熱があるため身体がだるいのかもしれないが、最大の理由は身体を治すという目的意識を持てないことだ。主治医はとにかく動くことが大事だというが、本人にその気はなく、寝たきり状態にならないかという懸念がいつもつきまとってしまう。

少しでも動けば回復することへの気力が生じるものだが、父は嫌だという。寒いというのが理由のようだった。何とかスタッフが説得して車椅子に乗ったが、すぐに降りてしまった。

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