「黒字転換」でも安心できないトヨタ
「最大の弱点」は中国

北京モーターショーに豊田社長は出席せず

 トヨタ自動車が11日、2010年3月期の連結決算を発表した。売上高は前期比7.7%減の18兆9509億円、営業損益は4610億円の赤字から1475億円の黒字に、当期損益も4370億円の赤字から2094億円の黒字に転換した。2年ぶりの黒字だ。

 黒字化の大きな要因は、コスト削減だ。

 緊急収益改善対策では、当初の予想は8000億円を目論んでいたが、予想以上に販売が伸びたことで1兆6900億円の改善効果が出た、というのがトヨタの説明だ。

 リコール対策費に1800億円かかったが、帳消しにした。2月時点での見通しでは200億円の営業赤字を予想していたので、一般的には急回復を印象付けた。

 トヨタが黒字化に向けて努力をしてきたことは認める。販売店や工場では血のにじむような努力をしてきたことだろう。しかし、この決算、最初の予測を相当に堅く見積もって、回復ぶりを印象付けていることは否めない。それはなぜか。創業家の御曹司、豊田章男氏が社長に就任して、これが最初の決算発表であり、赤字では様にならないからである。

 たとえば、連結販売見込みは、当初の予想では650万台だったのが、ふたを開けてみたら724万台。2つ分の工場の生産能力に相当する74万台も見込みよりも販売が増えていた。甘すぎた予想と言われても仕方ない。

 多くの証券アナリストは2月時点でトヨタの黒字を見通していたので市場的にはサプライズではまったくない。トヨタも2月時点で上方修正してもおかしくなかった。リコール騒動の最中にあり、世間の目を気にして、あえて上方修正しなかったのか。それとも赤字予想のまま黒字になったほうが世間を驚かせることができると思ったのか。

 連結販売台数を09年と10年の実績ベースで比較すると、トヨタはまだ回復途上にあることは明らかである。北米が11万台減の約210万台、欧州は20万台減の約86万台、中近東などは30万台減の114万台だった。

 増えたのは、プリウス効果で日本が22万台プラスの約216万台、アジアが7万台増の約98万台。トータルでは33万台減の724万台だ。豊田社長自身、「まだ嵐の中にいる」と認めている。

 売上高営業利益率もわずか0.8%。優良製造業の場合、5%はある。かつてのトヨタは10%近くあった。

 2011年3月期の予想も売上、利益ともに微増に止まる。これは堅く見積もるというよりも厳しい現実に直面しているからであろう。各国政府の販売奨励策も打ち止めとなり、市場の先食いの反動も予想されるからだ。さらに、「ギリシャ問題」の影響で円高に傾いている。リスク要因は多い。11年3月期の方が苦しくなるのではないか。

元気がなかった北京モーターショー

 筆者は4月下旬、北京モーターショーの取材で中国を訪問したが、トヨタは中国でまったく元気がなかった。日産や韓国現代自動車に勢いで負けていたし、商品が発するメッセージやブースの賑やかさでも、フォルクスワーゲンに比べて大きく見劣った。

 日産が中国市場を意識したマーケティング、商品開発を展開しているのに、トヨタは先進国の車を持ってきているだけで、中国市場に何のメッセージも出していない。トヨタブランドに胡坐をかいているとしかいいようがない。

 そして、世界最大の市場でのモーターショーだけに、各社ともトップが直接メッセージを発信したが、トヨタだけはなぜか社長が来なかった。頓珍漢な対応だ。ホンダもマツダも社長が初めて北京モーターショーに参加していた。

 筆者の独断と偏見も入る予想だが、トヨタは今後、中国市場で大敗を喫するだろう。重要市場に対する意気込みが感じられないし、中国の消費者をなめていると感じた。

 リーマンショック後、世界経済の潮目は変化した。自動車ビジネスも米国だけで稼ぐモデルは終わった。新興国でいかに稼ぐことができるかが、業績の明暗を左右する時代に来ている。

 一言で言えば大企業病に犯されたトヨタの前途は多難であると思う。社長就任1年目の「若葉マーク」も取れ、いよいよ豊田章男氏が経営者としての力量が問われてくるのが11年3月期決算だ。

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