日光東照宮(Photo by iStock)
週刊現代 歴史

売れてます!暗記しなくても知識が身に付く『日本史のツボ』

著者の本郷和人さんに聞く

日本史の面白さがわかる

―著書の『日本史のツボ』はタイトル通り、日本史の「そこが分かれば面白くなる」ポイントがまとめられている本書。「天皇」「軍事」「女性」など7つのテーマを大きな流れで掴むことができます。「こんなふうに歴史を教えて欲しかった」と思わせる本ですね。

この本を書こうと思った根底には、「日本史業界」の現状に対する危機感があります。

先日、ある理系の研究者と話をしていたら、「先生、おカネを何に使っていますか?」と聞かれて、ビックリしたんです。というのも、AIやバイオといった最先端分野の研究をしていると、予算が潤沢なうえに企業から協賛金まで出る。年度内にカネを使い切れなくて困っていると。

いっぽう、われわれ歴史研究の分野は、カネをどんどん削られ続け、毎年ひいひい言っている。はっきり言って、このままでは滅びます。

どうにかして「日本史はこんなに面白いですよ」と、世間に広くアピールしないといけないな、と。そういう本を書きたいと模索していたんです。

―昨年、呉座勇一氏の『応仁の乱』が40万部超のベストセラーになるなど、「もっと歴史を知りたい」という潜在的な読者はきっと多いですよね。

『応仁の乱』に続いて、亀田俊和さんの『観応の擾乱』もめちゃくちゃヒットしましたよね。

「じゃあ僕も、専門である鎌倉時代の『承久の乱』で一発……」と思わないでもなかったのですが、二匹目のドジョウはいても、三匹目の狸までいるかはわからない(笑)。

それに、ある歴史上の出来事についての細かな事実を「点」として書いた本というのは、あくまでもともと歴史が好きな人に向けられるもので、一般の読者に「面白かった」と思わせたり、「実際はこうだったんだ」と納得させたりするのはなかなか難しい。

かわりに、「何がどうしてそうなった」という大きな流れ、言うなれば「骨格」を示した本を書いてみようと決めました。

 

関東は「北斗の拳」並みに荒れていた

―本書には、「教科書で習う歴史」とはひと味もふた味も違う捉え方がたくさん詰まっています。たとえば「経済」の回で触れられる通貨の話は、目からウロコでした。

歴史の授業では、日本最古の貨幣は「富本銭」だと習うわけですが、古代史の研究者からは疑問の声が上がっています。どういうことかというと、富本銭は占いなどに使われていたかもしれませんが、実際に流通していたかははっきりしない。

つまり、流通しないものを「通貨」と呼べるのか、ということです。私たちが使っている福沢諭吉の1万円札だって、国家の保証もされず、貨幣として流通していなければ、20円ほどの原価で作られたただの紙切れ。その意味では、日本で通貨と呼べそうなのは、10世紀後半から行われた日宋貿易で輸入された「銅銭」が最初なのではないかと思います。

―もうひとつ、歴史に対する思い込みを解いてくれて興味深いのが、「地域」の回です。今では日本の中心となった関東地方が、いかに未開の土地だったか。

よく「栄光の古代」のような言い方で、奈良や平安の文化を褒め称えますが、それは歴史の一面でしかない。そうした豊かな暮らしを許されたのは、都を中心とした上方の、ほんの一部の貴族たちだけでした。

関東という言葉は、都がある中央から見て、鈴鹿などの「関の東」の意味。古くは岐阜くらいまでも関東で、時代が進んで次第に今の関東地方を関東と呼ぶようになった。

関東はほとんどの時代において「化外の地」つまり、文明の外にある場所です。わかりやすく言うと、漫画『北斗の拳』の世界ですね。力の強いヤツらだけが「ヒャッハー」している無法地帯。しかも、救世主のケンシロウなんて現れない絶望の地です(笑)。

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