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北京を訪れて分かった「中国はいま開戦前夜の真っ只中」という現実

彼らはどうやら本気のようだ
近藤 大介 プロフィール

「日本と同じ轍は踏まない」

もう一つ、呉正竜・元駐クロアチア大使の主張を紹介しよう。日本を絡めて論じていて、興味深いからだ。

「トランプ大統領はレーガン大統領を崇拝していて、レーガン時代に通商代表部副代表を務めていたのが、いまのライトハイザー通商代表だ。レーガン大統領が1980年代に、日本との貿易摩擦に勝利した体験に基づいて、同じ手法で中国との貿易戦争を展開しようとしている。

だが現在の中国は、以下の5つの理由によって、『第2の日本』にはならない。

第一に、当時の日本は貿易の4割をアメリカに頼っていたが、中国は全方位貿易を行っていて、アメリカ向けは全体の2割に満たない。すでに世界の130ヵ国が、中国を最大の貿易相手国にしているのだ。

第二に、米中経済は相互依存が進んでいて、すでにアメリカの45の業界が、今回の措置に反対する声明を発表している。

第三に、日本は1985年のプラザ合意で標的になり円高誘導され、バブル経済の後に失速した。この経過を、中国はつぶさに研究しており、同じ轍は踏まない。

 

第四に、日米関係は日米同盟による主従関係のため、日本は最終的にはアメリカに妥協せざるを得ない。だが中国はアメリカと同盟関係ではなく、対等な独立国なので、アメリカの規制を受けない。

第五に、1980年代にWTOはなかったが、いまや自由貿易を支持する国際社会が、こぞって中国の味方だ」

ライトハイザー通商代表〔PHOTO〕gettyimages

もしもアメリカが白旗を揚げたら…

次に、私が北京で聞いた「肉声」を紹介しよう。

・アメリカが狙いを定めているのは、「中国製造2025」だ(「中国製造2025」とは2015年に5月に中国政府が定めた、製造強国への方針や道のりなどを発布したもの。全文は http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-05/19/content_9784.htm )。先進技術の製造では、アメリカが世界の29%、中国が27%と、まもなく逆転されることに恐れをなしたのだ。

・2017年のアメリカの対中貿易赤字額は3752億ドルで、この貿易格差を減らすのは簡単だ。大豆、牛肉、天然ガス、航空機のアメリカからの購入を増やせばよいだけなのだから。貿易赤字の内訳は、携帯電話437億ドル、パソコン368億ドル、玩具122億ドルがベスト3だ。

・いまや中米両国の製品は、互いに依存し合っている。アップル社のパソコンを例に取れば、世界900の工場で作っており、中国が358ヵ所、日本が137ヵ所で、アメリカは64ヵ所しかない。

・今回の301条に基づく調査報告書は184ページに上るが、「赤字」(Deficit)という単語は、ただの1回しか出てこない。これは貿易格差問題ではなく、産業競争問題だ。

・トランプ政権のクレームは、大別すると以下の4点だ。

第一に、アメリカ企業が中国進出する際に技術移転を求められること。第二に、アメリカ企業が中国進出する際に、その分野の中国の技術が追いつくまで投資制限されること。第三に、アメリカの先端技術を持った企業が中国企業に買収されること。第四に、アメリカ企業の最先端技術を中国企業に盗まれることだ。

それらによって、年間500億ドルの損失が出ていると、ライトハイザー米通商代表は強調する。だが実に大袈裟な主張だ。

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