中国

米中貿易戦争、やっぱり怖い中国の「米国債売却」という一手

当然日本にも影響大

3月に米国が中国の製品500億ドル(約5.3兆円)に制裁関税をかける措置を発表して以降、米国と中国が関税の引き上げなど制裁措置の応酬に向かうという“貿易戦争”への警戒感が高まっている。米中とも全面衝突は避けたいが、批判の応酬は続く可能性がある。金融市場もそれに一喜一憂してリスク回避と反発を繰り返すだろう。

今後の展開を考えると、米国よりも中国に有利な部分があると考えられる。特に、中国は米国の国債を多く保有している。経済政策を運営する体制面でも、中国は実務、理論に精通した人材をそろえ、IT企業を中心とした改革も進んでいる。

一方、トランプ政権も簡単には強硬姿勢を崩せない。当面、金融市場は神経質に推移しそうだ。

 

貿易戦争の主戦場はIT分野

米国が中国に貿易戦争を仕掛けているのは、IT分野での台頭を抑えるためだ。わが国の国会にあたる全人代を終え、中国では習近平国家主席の長期的な支配基盤の整備が進む。

最も重要なことは、構造改革を進め、イノベーションを発揮することだ。製造業でのITテクノロジーの導入を通した生産性の向上、フィンテックビジネスの促進、電気自動車(EV)の普及による環境負荷の軽減などが重視されている。

それによって中国は経済成長率の維持を図りたい。改革を進め需要を生み出すことは、国有企業を中心に企業の収益力を高め、GDPの260%に達した民間の債務残高を徐々に減らすためにも重要だ。急速な金融の引き締めによって株式と不動産のバブルを崩壊させたわが国と対照的に、中国は改革を進めながら景気のソフトランディングを目指している。

中国は“一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)”を通して、自国を中心とした経済圏の整備にも取り組んでいる。それは、円高に苦しんできたわが国の教訓を生かし、自国通貨の為替レートの変動からの影響を低下させる取り組みといえる。すでに、カザフスタンやベラルーシとも中国は通貨スワップ協定を締結し、人民元の流通範囲を拡大している。

こうした国家改革に加え、中国は治安維持のための“天網”と呼ばれる顔認証システムの普及とその高度化、軍事面でのサイバー部隊の強化や宇宙開発にも取り組んでいる。IT先端テクノロジーの開発に向けて関連分野での競争力を引き上げることは、中国がその覇権を強化し、“中華思想=漢民族の繁栄”を追求するために欠かせない。

トランプ大統領の強硬姿勢が誘発するリスク回避

米国のオバマ前大統領は、中国の海洋進出を抑止することができなかった。その分、トランプ大統領は対中強硬姿勢をとることで、自らのリーダーシップを米国の有権者に示そうとしている。米国の最高権力者がこの発想を重視し続ける以上、世界経済の不確実性は上昇し、市場参加者のリスク回避姿勢も高まりやすい。

基本的に、米中ともに全面的な貿易戦争に突入することは避けたいはずだ。貿易戦争は、米中だけでなく世界全体にとってマイナスの影響をもたらす。関税引き上げなどの応酬が続くと、米国は必要な財を中国などから輸入することが難しくなる。それは経済の低迷リスクを高める。

また、中国は最大の米国債保有国だ。もし中国が米国債への投資を控えるとの憶測が市場に広がると、米金利は上昇し、世界的に金融市場は混乱するだろう。

 

その場合、中国の金利も上昇し、国内の企業、地方政府の信用リスクが上昇する。資金の流出圧力も高まるだろう。中国はそのリスクは犯すことができないはずだ。米中ともに水面下で妥協点を探り、大きな混乱を起さないよう貿易面での摩擦を解消しようと交渉を重視するだろう。こうした見方から、金融市場は安定感を維持している。

中間選挙に向けた支持確保のためにトランプ大統領が強硬姿勢をとり続けると、市場の安定感は徐々に損なわれるだろう。それは、ドルなどに対する円じり高の展開を支える可能性がある。

中国が報復措置として米国債の売却などを進めるのではないかとの憶測が高まる場合には、米国を中心に金利、ドル/円などの為替レート、株式と、市場全体でボラティリティーが追加的に高まり、金融市場が動揺する恐れもある。

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