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「完売御礼」を喜ぶ経営者は、残念ながら無能です

これが「店長3大思い込み」だ

「完売御礼」――。なんとも響きのいい言葉だが、セブンイレブン最年少取締役、ampmジャパン社長、ファミリーマート商品本部長を歴任し、大ヒット商品を作り続けてきた本多利範氏によると、それは大きな間違いだという。最新作『売れる化』を著した氏の問題意識とは――。

「完売」は成功ではなく、失敗である

今回は「完売」という言葉のもつ意味について考えたいと思います。

私は、「完売」という言葉にまったくいいイメージをもっていません。

フードの発注数と販売数が、ほぼ一致している店があります。これは一見すると、常に発注した分だけ販売しているため、「売り切る力」を持った店のように思えます。

しかし真実は「売り切った」店ではありません。「本当はもっと売れたのに、発注が足りなかったために売り逃した」店です。

仮に「10個売れるだろう」と予測する弁当があるとしましょう。

発注すべき個数はいくつでしょうか?答えは10個、ではありません。

正解は、12個です。つまり二個は最初から廃棄になるかもしれない分として計算すべきなのです。

 

廃棄となる二個は、たしかにもったいなく思えるでしょうが、廃棄には「必要な廃棄」と「異常な廃棄」の二種類があるのです。

特にフードなどのデイリー商品に関しては、総売上げの2%程度は適正な廃棄であり、必要投資であることをオーナーに理解してもらわなくてはなりません。では、そもそもなぜ最初から二個を廃棄分として計上しなくてはならないのでしょうか?

人の心理というものは不思議なもので、一個だけぽつんと置かれている商品を見ても、「欲しい」とは思わないものだからです。

ある程度の量で陳列している商品を目にして初めて、人は「欲しい」と感じます。
一個を発注しても、その一個は売れないでしょう。

在庫が一になった時点で、その店は廃棄商品を並べていることになるのです。
つまり、10個発注して、10個完売したとしたら、オーナーは喜ぶべきではなく、悔しがるべきなのです。

もっと発注をしておけば、もっと売れたのですから。

したがって、「100%販売目標」などという目標は、本来ありえません。もしそれが達成されたと喜んでいたら、その陰には必ず、在庫切れでその商品が買えなかったお客様が存在しているはずだからです。

店側としてはできるだけ廃棄率を下げたいと思う気持ちはよくわかりますし、私もここで、大量に食料を廃棄せよ、廃棄を気にせずどんどん発注しろ、と申し上げているわけではありません。

ただ、「一個の廃棄もしない」ことを目標に掲げ、消極的な発注をしていれば、大胆な棚構成はできず、結果的に「売れる店」にはなれないということです。廃棄分を見越して発注することが結果的に売上げアップに繋がることは、過去のデータからも明らかになっています。

例えば夕方早い時間にすでにケースに二個か三個しか残っていないパン屋、魚がわずかしか残っていない鮮魚店、各バケツの中に二、三輪しか残っていない生花店などに立ち寄った経験がある人はいるでしょう。

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どれも購買意欲は掻き立てられず、実際に必要で立ち寄ったのに買えなかった人も大勢いるはずです。

廃棄を恐れることは店側の心情ですが、客としては買いたいものを買えなかった残念な気持ちが残ってしまうものなのです。

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