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インターホンが壊れて夜も眠れない…高齢者「関係の貧困」の正体

相談できる人、いますか?
真鍋 厚 プロフィール

既存の友人関係の見直しや、積極的に行事や趣味などを介した「縁づくり」に乗り出す、という具体的な解決策もある(これは異業種交流会の主催者や結婚相談所の関係者などから聞いた話だが、3・11以降、人間関係を見直す人が爆発的に増えたという。これも危機意識の一つの表れといえる)。

しかし、人付き合いが苦手だったり、濃密な人間関係に気後れする人も当然いるだろう。その場合に、古市さんが運営する「御用聞き」のようなサービスを活用するのは、至極現実的な選択となり得る(*1)。

つまり、小難しい言い方をするならば、すでに私たちの社会では「家族機能のシェア」が始まっている。顔の見える関係性に重きを置く、「お手伝い」のアウトソーシングともいえるかもしれない。

 

「助け合えない世界」を前提に

今後重要性が高まるのは、「家族」というもはや限界点に達した概念ではなく、個人の生き方に根差した「親密圏」(親密な関係を核として、ある程度持続的に互いの生への配慮を共有する他者と他者の関係性 *2)という概念なのだ。

それは、古市さんのいう「個人発のコミュニティ」とほぼ同義と思われる。

「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」――自民党の改憲草案24条には、こう記されている。

この条文案には、すでに多くのメディアで「旧来の価値観の押し付けだ」とか、「社会福祉の削減を狙った、自己責任の正当化だ」といった批判がなされている。

だが、憲法草案の是非を問う以前に、現実問題として「家族で助け合う」という光景そのものが、今や実行不可能な絵空事になりつつある。「理想の家族像」を云々する以前に、このような「家族が助け合えない」実態をこそ、私たちは直視しなければならない。

〈引用文献〉
(*1)「御用聞き」のスタッフの多くは大学生。地域貢献などのボランティア活動の経験を積みたい学生側との利害が一致している面があるという。
(*2)越智貢・川本隆史・高橋久一郎・金井淑子・中岡成文・丸山徳次・水谷雅彦編『岩波 応用倫理学講義〈5〉性/愛』岩波書店
〈映像資料〉
『プレッパーズ~世界滅亡に備える人々~2』(原題:Doomsday Preppers)シリーズ 第1話「備えなければ勝利なし(原題: You Can't Let Evil Win) 」ナショナルジオグラフィック(TV)