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インターホンが壊れて夜も眠れない…高齢者「関係の貧困」の正体

相談できる人、いますか?

「ずっと鍵を開けっぱなしなの」

近年、注目を集めている100円家事代行サービス「御用聞き」(東京都板橋区高島平)の活動をご存知だろうか。

「御用聞き」は、その名の通り、電球交換やあて名書き、ビンのフタ開けなど、日常生活のさまざまな「困りごと」をお手伝いすることを業としている。現在、その利用者数は飛躍的に増加しており、いわば地域の空洞化にミクロレベルで対処する、「助け舟」の役割を果たしている。

上記のような問題は、かつてなら、ご近所付き合いの延長線上で解決していた。しかし、超高齢社会への移行に伴う高齢者の単身世帯の急増、病気や障害による移動範囲の縮小、地域におけるコミュニケーション機会の減少と世話役の不在などを背景に、どうにもならなくなっているのだ。

7年前、「御用聞き」を創業した当時のエピソードがそれを如実に表している。

代表の古市盛久さんは、「電球を交換してほしい」との注文で客先の自宅に訪問した際、インターホンが鳴らず、声を掛けても応答がなかったため、不審に思いながらカギのかかっていない玄関を上がった。テレビの爆音が流れる部屋の中に一人座っていたのは、高齢の女性だった。

 

電球交換の仕事は、5分100円で無事に終了した。

古市さんは、精算の時、女性に何げなく「インターホンが故障していましたよ」と話した。すると、その女性から予想外の答えが返ってきたという。

「インターホンが壊れていることは、ずっと前から知っているんだよ。でも、誰も直してくれないし、誰に相談したらいいかもわからないしねぇ……。インターホンが鳴らないから、友達が訪ねて来ても分からないと困ると思って、それで友達に嫌われるのが怖くて、ずっと鍵を開けっ放しにしているの」

そのことが不安で夜も眠れない、と打ち明けたのだった。

古市さんは、すぐにインターホンのカバーを開け、電池を交換した。インターホンが再び鳴った瞬間、女性は古市さんに「ありがとう。これで安心してゆっくり眠れる」と言い、大粒の涙を流した。

つまり、電球交換をきっかけにして、「本当の困りごと」が見えてきたのだ。

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「困りごと」を相談する人がいない

これは、シンプルに「誰かに話せば済む問題」と言い換えることもできる。ただ、彼女には日頃から気軽に会話する「誰か」がいなかった。それこそが、真の問題であることがより明確になった。

だから「御用聞き」のモットーは、「会話で世の中を豊かにする」だ。

実際、多くの高齢の利用者が「御用聞き」のスタッフとの会話を楽しみにしている。注文に応えた後に、お菓子や飲み物などを御馳走されるケースもあるという。

たとえわずかな時間であったとしても、地域から孤立していたり、身近に頼れる人がいない場合、このような利用者の立場に寄り添ったサービスは、非常に重宝されることは間違いないだろう。リピーター率は8割に達しているそうだ。