photo by kiyoshi mori
恋愛・結婚

恋愛小説の第一人者が語る「どんな醜男でもモテる秘訣」

映画『娼年』原作執筆の裏側

4月6日、映画『娼年』(主演/松坂桃李。監督/三浦大輔)が公開される。主人公が「娼婦」ならぬ「娼夫」ということもあり、ほぼ全編がセックスシーンという過激さで話題になっている。原作は、石田衣良さんが2001年に発表した自身初の恋愛小説で、性を主題にした官能的な小説でありながら、決して下品に堕ちず、人間の欲望というものに真摯に向き合った文学性が高く評価された。

それから17年。日本の恋愛事情は、「独身者の中で、彼氏がいない女性が6割、彼女がいない男性が7割」(国立社会保障・人工問題研究所)と、おひとり様天国の様相を呈している。かといって、このおひとり様たちは恋をしたくないと思っているわけではないようなのだ。

恋したくてもできない、一歩踏み込んで言えば、セックスしたくてもできない、日本の恋愛の閉塞状況をどうしたらいいのか。恋愛小説の第一人者となった石田衣良さんに聞いてみた。

みんなが不機嫌で不幸な顔をしている

――映画『娼年』の原作小説を書いていた頃と、約20年が経った今と、セックスを題材に書き続けている作家として感じている変化はありますか。

「書いていた時期は2000年ですから、ちょうど世紀末の頃ですね。まだセックスレスという言葉は今ほど一般化していませんでした。長年連れ添った夫婦の間でさえ、セックスレスの人は少数派だったはずです。

でも、その後17年間で比率は逆転しています。レスの人が半分以上いる。若い人は経済的な理由でも、結婚や恋愛に腰が引けているし、夫婦間では心の距離も離れているなと、思いますね。それは年齢に限らず、20代から50代でも半分以上はレスでしょう。みんな、なんとなく険しくて不幸な感じがします。」

 

――それは、どんなところに感じるのでしょうか。

「作家というのは、電車に乗っていてもパーティ会場のような場所でも、人の表情を観察しているものです。最近は、みんなが不機嫌で不幸な顔をしている。なんでだろうね……もちろん景気は悪いし、格差は広がっているということはある。

でも、その半分は性的な満たされないこと、セックスレスに原因の一部があるのかなと、思うことはありますね。スペインやギリシャみたいに不景気で仕事がないような国であっても、夜になるとセックスして心をピタリと合わせることができる相手がいれば、持ちこたえられる幸福ってありますからね」

photo by kiyoshi mori

――世紀末から約20年、これほどセックスレスが広がった原因はどこにあると思いますか。

「ひとつには貧しさがあると思いますよ。これだけ不景気が続いて格差が広がってくれば、ひとりだけでも生き残りたいという利己主義みたいなものが、人と人の心を近づけにくくしているんじゃないかな。

ほら、よく未来の確率を数字にして見せる人がいるじゃない。結婚によっていくら損をするとか、そういう数字をカウントするには本当に良くないよね。その数字に影響されて結婚したくないという人もいる。

でも、独身の人にとっては結婚は未来のことでしょ。未来のことは誰にもわからないわけで、計算しても仕方ないんです。数字をいじってわかったような気になるというのは良くない傾向です。数の表現はわかりやすいけど、同時に数にはウソがいっぱいあるから。

だって人は80年で死ぬと言っているのと同じで、確かに死ぬんだけど、だからといって、それでいま死のうと思う人はいないんだから。改めて言う必要はないですよね」

――「なんとかなる」とか、楽天的な生き方が許されない空気がありますね。

「あります。『なんとかなる』って言うなら、証拠を見せろ、保証を付けろと、まるで家電の『保証書』のような要求をしてくる人がいます。でも、生きることにそんな『保証書』は付けられないじゃないですか。恋愛だって同じで、やってみないとわからないことなのに、付き合う前から「損をする」と思い込んでやったら、恋愛はできないよね。

それと、今の日本人は、楽しむことや気持ちの良さを言ってはいけないことだと思っています。だから、恋愛にしてもセックスにしてもどんどんクローゼットの中に押し込めてしまって、日陰になっていく。それが良くないのかな」

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