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介護職の給料はなぜ「低賃金」のままなのか? その闇の深層

このままでは一生貧困が続く…
中村 淳彦 プロフィール

新たに始まった「再編」の動き

前述した通り介護保険は3年に1度、報酬が見直され、今年がその改定の年で4月より新報酬で運営されている。今改定では0・54パーセントアップという現状維持で決着した。一方で社会保障の増大は国の急務の財源課題であり、次改正以降の報酬減は既定路線となっている。

訪問介護事業を展開する、株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズの宮本剛宏社長も、この既定路線に危機感を募らせている。

「介護業界が抱える問題の大前提としてまず、国の財源不足と人手不足があります。しかし、それ以上に大きな問題は、やはり介護保険事業のまわりに群がる周辺事業者の存在です。具体的には人材会社やM&Aアドバイザー、コンサル、フランチャイズですね。彼らは介護事業を手掛けているわけではないのに、介護事業者を通す形でなけなしの介護報酬を奪っていきます」

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介護報酬改定の指針となるのが、毎年行われる「介護事業経営実態調査」による“収支差率”だ。売上の中の利益をしめす調査で、2017年度は介護老人福祉施設1・6パーセント、訪問介護4・8パーセント、特定施設入居者生活介護2・5パーセントと、かなり厳しい数字が出ている。

例えば、有料老人ホームなどの特定施設入居者生活介護で、年間1億円を売り上げたとする。しかし利益は250万円しか残らない。夜勤つきの介護求人倍率は10倍を超える状況で、そこの求人を前述した「半年で辞めさせる一部の人材会社」に頼れば、たちまち赤字に転落するのは目に見えている。事業所は売上の大部分を占める介護職の賃金を下げてでも事業所を運営するしか手段がなくなってしまうのだ。

 

「中小零細会社が運営する介護保険事業所が多すぎることが、人材不足の大きな原因のひとつとなっています。中小零細企業の多くは、職員に適切なキャリアパスを用意できないので、辞めてしまう介護職が多いのが実態です。

企業活動とは、業務の効率化を図って儲かる仕組みを作ることが本来の目的です。現在、法人の売上が10億円以上の複数の大規模法人経営者で情報と人材を共有し、介護保険の維持継続のために協力、政策提言していこうと動きがあります」(宮本氏)

先日、宮本氏もメンバーに加わり、プレジデント社が主催する「FUTURE CARE CLUB」が発足した。「FUTURE CARE CLUB」は介護事業者が、経営効率を良くするために勉強会や講演会を行うということが主旨だが、オプションサービスとして、参画企業は退職者情報を共有して、外部の事業者への介護報酬の流出を防ぐ施策も行うとのことだ。他にも、コンサルやM&Aの業者に介護報酬の流出を防ぐ方策も準備中だという。

2000年から現在まで続いた、手の打ちようのない荒れ果てた状態を経て、また新たな動きが始まりつつある。高齢者たちの死と、ひとりの介護職の死刑判決という最悪の悲劇を経て、ようやく「遅すぎる再編」がスタートするのだ。