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介護職の給料はなぜ「低賃金」のままなのか? その闇の深層

このままでは一生貧困が続く…
中村 淳彦 プロフィール

「周辺業者のなかでも、特に一部の人材会社(人材派遣、有料紹介会社)への売上流出が深刻です。介護の求人はインターネットが中心で、人材の採用は検索システムが優れた人材会社に握られている。中小の事業所や介護運営会社では、人材募集をかけても応募すら来ないので、必然的に人材会社に利益を吸われ続ける構造になってしまっています」

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試しに検索サイトで「介護求人」などと打ち込んでみる。検索上位にずらりと並ぶのは、なるほど人材会社のサイトがばかりだ。

介護職の有効求人倍率は東京で3倍以上、愛知は5倍以上、夜勤つきになると10倍を超える状況。介護の成り手がほんど居ないなかでの採用は困難を極める。

「介護業界は長年、人材会社のカモになっていました。経営者ごと大きな渦に飲み込まれて、大袈裟にいえば、一部の人材会社を筆頭にした周辺事業者のために、介護職が過酷な労働をしているという状況です。

例えば、ある介護福祉士が人材会社に登録したとします。

まず人材会社は6ヵ月間、どこかの施設にその介護福祉士を紹介します。なぜなら6ヵ月のペナルティー期間を過ぎれば、その介護福祉士が紹介された施設を辞めても、キャンセル料は発生しないからです。そして入職6ヵ月が経つころ、その介護福祉士に新たに転職勧誘のメールをバンバンを送るわけです。

今いるところよりも賃金や働く条件がよければ、人材は移ってしまう。こうやって退職させて、次の施設を紹介し、これを3回程度繰り返して大儲けするというビジネスモデルになっているのです」(藤田氏)

介護福祉士1人の紹介料は会社によって異なるが、約15万円~50万円という。1人雇うのに半年ごとにその金額を支払い続けなければならないとなると、事業所は破綻してしまう。零細事業所であれば月の利益が吹き飛ぶどころか、赤字運営になる金額だ。

介護は高齢者の日々の生活を支えているので、一度休業して事業所を立て直すことができない。慢性的な人材不足にあえぐ事業所で募集をかけても誰も集まらない。結局、人材会社に頼るしか運営する手段がなくなる。本来であれば介護職に分配されるべき介護報酬が人材会社に流れていく悪循環が、ひとつのスキームとして完成されているのだ。

介護保険は40歳以上が毎月支払う介護保険料と、国、都道府県、市区町村の公費でまかなわれており、その介護保険に応じた介護報酬の売上を事業所が介護職に分配する仕組みになっている。3年ごとに改定される介護報酬は、介護職に分配することが前提で制度設計がされており、しかし現実は、介護職に分配される前の段階で手にするべきお金が事業所からなくなっているのだ。

「ぼくらは介護サービスを提供することがメインの仕事です。事業所の家賃や光熱費、人材教育費などの固定費がかかるため、少ない介護報酬のなかで人材確保にまでお金はなかなか回りません。

しかし、人材を集めることに特化した人材会社は、先ほど述べた検索システムの最適化にお金をかけたり、人を集めるために就職祝い金の予算を組んだりといった、求職者に対するサービスを提供できる。

 

人材の確保や育成、介護職のキャリアパスなどは介護事業所の企業努力ではあるけれど、実際のところ、そうしたことに特化した人材会社にわれわれが勝つのは難しい。直雇用のほうが圧倒的に還元率は高いのに、こうした負の連鎖に介護事業所や介護職は苦しめられている」(藤田氏)

UAゼンセン賃金実態調査によると、介護職の2017年8月の平均賃金は、前年度と比べて若干上昇しているものの。入所系介護職正規雇用で21万5749円、非正規雇用介護職14万2853円と依然として低水準のままだ。

介護事業所で働く過半数が非正規で雇われており、単身者であれば「相対的貧困」に該当する金額だ。泥沼のダブルワーク、トリプルワークなど、生きていくために長時間労働を強いられる「介護職の貧困」が社会問題になって久しい。彼らが必死になって働き稼いだ介護報酬が人材会社に流れていく仕組みがある限り、介護職は貧困のまま続くというのが現実なのだ。