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野球 週刊現代

大阪桐蔭と戦った、佐賀21世紀枠・県立伊万里高校野球部の10日間

思わずクジ運を呪った、あの瞬間

思わず、クジ運を呪った。甲子園にはコールドがない。どんな展開になるのか、考えると震えて夜も眠れない。策もない、徒手空拳の戦いだ……。それでも男の子にはやらなきゃならない時がある。

雲の上のような存在

佐賀県立伊万里高校を指揮して5年目を迎える吉原彰宏監督は、3月16日の組み合わせ抽選会の直後、「よりによって……」とつぶやいた。鬱々とした気分がしばらく晴れなかった。

21世紀枠として、初めて甲子園の舞台に立つというのに、対戦相手が銀河系軍団とも呼ばれる大阪桐蔭に決まったのである。

「あのレベルの学校は九州にはないし、練習試合でも対戦することはない。未知の世界です……」

試合が2日後に迫っても、吉原の口から漏れるのは溜息ばかりだった。

「打球は鋭いし、ノックを見ていても送球の強さと正確さが違う。それに単に選手の能力が高いだけじゃない。

抽選会の時に(大阪桐蔭主将の)中川(卓也)君の発言を聞いていたら、チームのまとめ役として大人びた発言をしていた。キャプテンがしっかりしたチームって、隙がないんですよ」

吉原は「(大阪桐蔭の)藤原(恭大)君の足の速さはどれくらいですか?」「打線は変則左投手の緩いボールに弱いって本当ですか?」と、質問を投げかけてきた。できる限り情報をかき集め、試合で想定外になることを避けたいのだろう。

藤原は50m5秒7という驚異の俊足がウリで、出塁すれば即座に盗塁を決める。昨春のセンバツ決勝では2本塁打を放ち、今秋のドラフトで上位指名が有力視される外野手である。

他にも148km右腕の柿木蓮、190cmの左腕・横川凱、遊撃手兼投手の根尾昂ら、プロ注目選手が集まる。

 

ただし、吉原は選手の前では強豪校に臆する姿をひた隠しにしてきた。

「『相手が大阪桐蔭だと考えるな』と伝えています。策があっても、うちの選手は使いこなせない。策を練るよりは、自分たちの力を出すことに専念したほうがいいという結論に行き着きました」

とはいえ、何もせずに臨めば、叩きのめされるだけだ。バッティング練習では、マシンの球速を145kmに設定し、打撃投手も4mほど前から投げ込んでいた。これは明らかに柿木の剛速球を想定した練習だろう。

佐賀出身の柿木と同じ中学硬式野球・佐賀東松ボーイズでチームメイトだった伊万里・古賀昭人が話す。

「柿木は中学生で143kmを投げていて、変化球もあるのに直球だけで9割方抑えていた。

(大阪桐蔭の)西谷(浩一)監督が佐賀まで見に来られていて、『あいつ、大阪桐蔭から誘われているんだ』ってびっくりしました。同じ仲間でも、柿木は雲の上のような存在」

伊万里の誰もが、大阪桐蔭の先発がエースの柿木であることを疑っていなかった。

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