国際・外交 週刊現代 中国 北朝鮮

金正恩が訪中時、習近平に思わず漏らした「トランプへの本音」が判明

「あの男と対立したら…」
近藤 大介 プロフィール

そこでも金正恩委員長は、雄々しく述べた。

「私が最初の外国訪問の地に中国の首都を選んだのは、当然のことだ。両国で同じ社会主義の道を発展させていこうではないか!」

翌27日、午前中は「北京のシリコンバレー」こと中関村を訪問し、「中国科学院イノベーション成果展」を見学。午餐会は再び、習近平主席夫妻が主催して、釣魚台国賓館にある高級中華料理店「養源斎」で行われた。

習主席自らが、ディナーとランチに2日連続でつき合ったのは、朴槿恵前韓国大統領、オバマ前米大統領に続いて3人目。今回の会談を非常に重視していたことを意味する。

より非公式なランチの席で、金正恩委員長は習近平主席に対して、最も気になっていることについて、遠慮なく質したに違いない。それはもちろん、トランプ大統領に関することだ。

「トランプは信用できる男か?」

「トランプはいったい何を考えているのか?」

「トランプと対立したら中国はどこまで助けてくれるか?」

金正恩委員長の脳裏は、「トランプ」で一杯のはずなのだ。

 

トランプの動向を随時チェック

一例を示そう。ある朝鮮労働党関係者の話によれば、金正恩委員長の毎日の職務は、「最新のトランプ大統領のツイッター内容」の報告を受けることから始まるという。

それ以前は、「聞いて心地よい報告」だけが、金委員長に伝えられていた。もしも金委員長が顔をしかめるような報告をすると、側近たちはいつ粛清のとばっちりを受けるか知れないからだ。

ところが、トランプ大統領の就任以降は日々、「大統領のつぶやき」の「直訳」が報告されるようになった。ホワイトハウスの主が「チビのロケットマン!」と叫べば、そのまま朝鮮語になって「金正恩官邸」に伝えられるのだ。

Photo by GettyImages

これは鎖国国家の「奥の院」に、革命をもたらした。「天が崩れても恐れない」はずの偉大なる領導者(金委員長)が、突然の米軍襲来の恐怖を、「現実問題」として意識し始めたのである。

米軍襲来のリスクが高まれば、国内は動揺するから、クーデターなどのリスクも高まることになる。当面は核実験やミサイル実験などで「虚勢」を張ることはできても、どこかでソフトランディングに転じる必要に迫られていたのだ。

これに「救いの手」を差し伸べてくれたのが、朝鮮戦争で北朝鮮から落ちのびた両親を持つ韓国の文在寅大統領だった。平昌冬季オリンピックへの参加という、金正恩委員長のプライドが傷つかない格好で、トランプ政権との間を取り持ってくれた。

その結果、トランプ大統領と金正恩委員長の「世紀の首脳会談」を、第三国である韓国政府が発表するという、極めて異例の展開となった。

「ミーティング・ビーイング・プランド」(会談が計画されている)とトランプ大統領がつぶやいた3月9日のツイッターは、「速達」で金正恩官邸に届けられたに違いない。

だがトランプ大統領は、北朝鮮ばかり見て外交を行っているわけではない。トランプ大統領にとって北朝鮮外交以上に重要な中東外交を巡る確執によって、対北朝鮮穏健派の筆頭だったティラーソン国務長官の解任が発表された。

後任は、「金正恩斬首作戦」の中心人物、ポンペオCIA長官。続いて、大統領安保補佐官に、北朝鮮の政権転覆を公言するボルトン元国連大使が指名された。

これらの人選は、北朝鮮にしてみれば、「首脳会談シフト」ではなく「戦争シフト」である。

「もしや、トランプに欺かれたのでは……」

疑心暗鬼に陥った金正恩委員長は、「隣の大国」を頼るしかなかった。

そこで、3月20日に2期目の習近平政権が発足したことに伴って、「新時代の中朝関係」を築くべく、真っ先に北京に馳せ参じたというわけだ。

新生・ブルーバックス誕生!