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北朝鮮の機関紙だけが伝える中朝首脳会談「知られざる成果」

これはもう金正恩外交の勝利と言える

習近平主席と金正恩委員長の初めての中朝首脳会談から1週間が過ぎた。

朝鮮労働党中央機関紙『労働新聞』(3月28日付)は、北朝鮮より報道の自由がある(?)中国のメディア以上に、詳細に報じている。そこで『労働新聞』の報道から読み取れることについて見ていきたい。

この日の『労働新聞』は、7本立てで金委員長の訪中を詳細に報じた。①訪中日程、②歓迎式典、③朝中首脳会談、④歓迎晩餐会、⑤歓迎午餐会、⑥金委員長スピーチ、⑦習主席スピーチである。

これらを読むと、北朝鮮側からは、あくまでも中国との「対等な関係」を強調している。そして朝中関係の新時代を、金正恩委員長と習近平主席とで切り拓いていくとしている。

以下、具体的に見ていこう。〈 〉内は、記事の引用である。

 

金正恩委員長の同行者は誰だったのか

〈 朝鮮労働党委員長、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長でおられ、我が党と国家、軍隊の最高領導者でおられる金正恩同志におかれましては、中国共産党中央委員会総書記であり、中華人民共和国主席であり、中央軍事委員会主席である習近平同志の招待により、主体107年(2018年)3月25日から28日まで、中華人民共和国を非公式訪問された。

敬愛する最高領導者同志に仕えて、李雪主女史が同行し、朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会委員、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会副委員長、党中央委員会副委員長である崔竜海同志、及び朝鮮労働党中央委員会政治局委員、党中央委員会副委員長である朴光浩同志、李洙墉同志、金英哲同志、朝鮮労働党中央委員会政治局委員であり外相である李勇浩同志、朝鮮労働党中央委員会副部長である趙容元同志、金成南同志、金炳浩同志、それに朝鮮民主主義人民共和国国務委員会の成員たちが随行した。

中国の党と国家領導者たちは、長い歴史的な根を持っている伝統的な朝中親善を、新時代の要求に合わせて新たな高い段階へと、さらに継承発展させるために、歴史的な初めての中国訪問の道に上った敬愛する最高領導者同志を熱烈に歓迎し、最大の誠意をもって盛大に歓待した。

敬愛する最高領導者が乗られた特別列車が中華人民共和国の国境都市である丹東に到着するや、駅には中国共産党中央委員会対外連絡部長である宋濤同志、遼寧省党委書記陳求発同志、中国鉄路総公司総経理陸東福同志、駐朝中華人民共和国特命全権大使李進軍同志、遼寧省党委員会常務委員、書記長劉煥鑫同志、丹東市党委書記葛海鷹同志が出迎えた。

敬愛する最高領導者同志と李雪主女史には、女性たちが香しい花束を捧げた。敬愛する最高領導者は、宋濤同志一行が遠路はるばる首都から国境の都市まで迎えてくれたことに対して、謝意を述べられた。宋濤同志は、習近平同志からの委任を受けて北京から来たと述べ、尊敬する金正恩同志と李雪主女史の中国訪問を熱烈に歓迎すると語った 〉

まず、北朝鮮は、「建国の父」金日成主席が生まれた1912年がすべての始まりなので「主体1年」、今年は「主体108年」である。

金正恩委員長の同行者を縷々、羅列しているが、トップに李雪主夫人が登場する。北朝鮮の指導者が、夫人を伴って外遊に出るのは、建国以来初めてのことである。

それから、日本や韓国の一部メディアが、妹の金与正党第一副部長も同行しているのではと報道していたが、それはありえない。

なぜ金正恩委員長が、2011年12月に最高司令官となってから一度も外遊しなかったかと言えば、最大の理由は、外遊したらクーデターや反乱が起こることを恐れたからだ。以後、少なからぬ側近たちを粛清し、いまようやくクーデターのリスクが減ったとみて、中国へやって来たのである。

それでも留守中が心配なはずだから、一番信用できる妹の与正は、平壌に置いていくに決まっているのである。彼女は平壌で「監視役」を果たしているのだ。

次に、北朝鮮のナンバー2には、金日成主席の最側近だった故・崔賢人民武力部長の次男である崔竜海が収まっていることが分かる。

崔竜海は、2013年5月に「金正恩特使」として訪中したが、習近平主席がなかなか会ってくれなかった。次に2015年9月、「中国人民抗日戦争勝利70周年軍事パレード」に、やはり「金正恩特使」として訪中したが、金正恩委員長が不参加だったため、冷遇された。

このため崔竜海にとって北京は鬼門だが、今回3度目の握手をした習近平主席は、一連の金正恩側近と握手した際、崔竜海と握手した時だけ、一瞬立ち止まった。以前会ったことを記憶していたのだろう。

元スイス大使で金正恩のスイス留学時代に父親役を務めた李洙墉外交委員長も、2016年6月に短時間、習近平主席と面会したが、金正恩訪中をセットすることはできなかった。また、金正恩の軍事教官を務めた金英哲統一戦線部長は、2月の訪韓に続いての外国訪問である。

一方、中国側は、「共産党の外相」にあたる宋濤中央対外連絡部長が、丹東まで出迎えた。宋濤部長は昨年11月、「習近平特使」として訪朝したが、金正恩委員長に4日間、無視されたあげく帰国した。また李進軍大使は、2015年3月に駐平壌の中国大使となって以降、一度も単独で金正恩委員長との面会を許されていない可能性がある。

いずれにしても、中朝側の面々を見るだけで、この5年あまりの険悪な中朝関係が想起されるのである。

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