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アパホテルが「一泊3万円」の高額路線でも驚異の成長を続ける理由

高いなと思った瞬間、あなたの負けです

アパホテルが364億円という驚くべき経常利益を叩き出した。「一泊3万円は高い」なんていう批判はどこ吹く風。いったいなぜここまでの安定的な経営が可能なのか。日本創生投資代表で、『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の著者・三戸政和氏がその仕組みを解説する。

脅威の経常利益率

去る2月23日、アパホテルなどを運営する「アパグループ」の平成29年の決算が発表された。売上高が1,161億円、経常利益が364億円という恐るべき数字に、ネット界隈ではどよめきが起こった。

経常利益のサイズでいえば、高島屋が372億円、ヤマト運輸やサンドラッグが348億円である。経常利益だけをみれば、さほどインパクトのある数字ではない。驚くべきは経常利益率(売り上げに対する経常利益の割合)だ。

一般的に「経常利益率は5%あれば合格点といわれるなか、高島屋が4.0%(売上高9236億円に対して372億円)、ヤマト運輸は2.4%(1兆4778億円に対して348億円)、サンドラックは6.6%(5,283億円に対して348億円)。これに対して、アパホテルの経常利益率はなんと31.3%!

この水準は、ネットゲームの「パズドラ」を運営するガンホーエンタテイメントの37.2%(売上高923億円、経常利益343億円)に匹敵する。

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通常、ホテル経営は人件費や賃料がかさむので、ネット企業のように二桁レベルで利益率をあげることはできないと言われている。実際に「ドーミーイン」を運営する共立メンテナンスの経常利益率は8.5%だ。

なぜ、アパホテルはここまでの収益力を誇るのか。持ち上げるわけではなく、同社の経営手法から、「おカネを稼ぐ」とはどういうことか、を考えたい。

謝罪会見からどう立ち直ったか

ひとつのきっかけは、「耐震偽装問題」だった。遡ること10年以上前の2007年1月、同社が運営するホテルで「耐震偽装」が行われていたのではないか、という疑惑が浮上。社会から批判を受け、社長が謝罪会見をするまでに追い込まれた。アパは銀行からのプレッシャーをかけられ、保有していた土地の多くを売却することになった。

普通の企業ならこれで息の根を止められるところだが、その直後にリーマンショックが発生。日本の土地価格が大暴落したことにより、アパホテルは売却した資金と新しい借り入れを元手に、売った時より格段に安くなった土地を買い占めることができたのである。

安価で土地を仕入れたうえに、現在のような低金利が続けば、まず賃料の負担が非常に低く収めることができる。収益率が高い理由のひとつはここにある。

それだけではない。アパホテルの収益率の高さの秘密は、悪名高い「宿泊料の高さ」にある。

「繁忙期には、アパホテルは一泊3万円もする」というのは、皆さんもご存じだろう。ビジネスホテルの単なるワンルームで高級ホテル並みのお金を取るアパの方針については、賛否両論が繰り返されていた。

「こんなに高ければホテルのブランディングに影響して、景況感が悪くなった時には、いくら値段を下げても誰も泊まらないだろう」

という、まぁ単純なコメントもよく耳にした。「人の噂も75日」ではないが、アパホテルが一泊3万円もすることなど、景気が悪くなってしまえば誰も覚えちゃいないだろう。

なにより、アパホテルに高級ラグジュアリーホテルのような顧客ロイヤリティが必要なわけでもなく、むしろ、価格に敏感に反応する顧客層を狙っているので、そんな人はそもそもターゲットではないのだ。