東京・千鳥ヶ淵の桜(写真は全て筆者撮影)
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中国人も韓国人も「日本の桜」が気になって仕方がない理由

ソメイヨシノはなぜ特別なのか?

日本人と会ったら、桜の話から…

春です。今年も桜の季節がやってきました。首都圏以南の桜の名所では、今日がお花見の「最後のチャンス」というところも多いかもしれません。

ところで近年、中国人の間で日本の桜が大人気になっていることをご存知でしょうか。

近年は、「桜を見る」ことを日本観光の大きな目的にしている中国人も増えています。春節が終わる3月上旬になると、中国メディアでは必ず日本の桜の話題が報じられるほどです。最近の中国人は、もしかすると日本人よりも桜に詳しいかも知れません。開花時期の予想さえ頻繁に行われています。

筆者は長年、日本と中国を行き来する生活をしていますが、最近の中国人は筆者が日本人だと分かると、ほとんど挨拶代わりに桜の話題を投げかけてきます。

「ルーベン(日本)・インファー(櫻花)・ヘン(とても)・ピャオリャン!(美しい)」

日本の政治・外交についてはネガティブな報道や批判が多い中国世論ですが、こと桜に関しては「全面支持」の状態です。

 

不思議なのは、海外のものを何でも模倣する中国が、なぜ桜だけはマネしないのだろうか、ということ。その気になれば、中国にだっていくらでも植えることは出来るのですが。
 
彼らがあえてそれをしないのは、「日本」と「桜」がセットになってこそ意味がある、と考えているからかもしれません。
 
先ほど「櫻花」と書きましたが、中国語では「日本櫻花」と表記するのが普通です。単に「櫻花」と書く場合は、中国では食用のために栽培する「桜桃」(サクランボ)の花のことかもしれませんし、あるいは、実は日本よりはるかに(日本産の5倍以上)種数の多い中国産の「野生のサクラ」を指すこともあるでしょう。

筆者は去年、たまたま桜の季節に中国から日本に帰ってきて、真夜中に羽田空港に着きました。他の乗客はほぼ全員が中国人でした。

到着ゲートを出たところで、驚愕しました。ベンチや飲食店の周りが桜のデコレーションで埋め尽くされているのです。本物の桜の木を、水を湛えた大きな甕(かめ)に差して、見事な景観を作っています。多くの中国人が足を止めて、スマホで写真を撮っていました。

昨年4月の羽田空港国際線到着ロビー

日本人にとっては、それほどありがたみのある光景とも言えないでしょうから、これは明らかに訪日外国人、特に中国人向けのサービスなのでしょう。

そんなわけで、少なからぬ中国人が「日本に行って桜を見る」ことを夢にしていると言っても、決して大袈裟ではないように思われます。

中国だけでなく世界の人々が、私たち日本人が考える以上に「日本=桜」というイメージを持っているのです。「ソメイヨシノのルーツはわが国だ」との世論もあるという、韓国は別かもしれませんが…。

「桜の花見」自体が珍しい

桜は日本でも、江戸時代末期までは現在のように華やかな存在ではありませんでした。私たちが愛でているソメイヨシノは、「野生」のサクラではないのです。

まず「そもそもサクラとは何か?」を説明しておきましょう。読者の方々にとっては、生物学的な話題は読みづらいかも知れませんが、少しだけお付き合いください。

サクラ属には、モモやウメなども含まれます。さらに属を細かく分け、スモモ属(スモモ、プルーンなど)、ウメ属(アンズ、ウメなど)、モモ属(モモ、アーモンドなど)などに分類する見解もあります。その場合、狭義のサクラ属にはサクラのほかサクランボなどが含まれます。

中国では、サクラよりもスモモ(李子)、アンズ(杏子)、モモ(桃子)のほうが圧倒的にポピュラーです。中国人に桜の花を愛でる習慣がないのは、「サクラはサクランボ(桜桃)の花に過ぎない」との認識からでしょう。世界的にも、サクラ属の植物は果実を食べるために栽培するのが主流ですから、花に重点を置く日本の文化はかなり特殊といえます。

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