Photo by gettyimages
IT

フェイスブックは大丈夫? 個人情報流出事件に見る「情報社会の影」

スパイ小説も真っ青の展開

事の発端

去る2018年3月21日、マーク・ザッカーバーグはFacebook上の全てのアプリ開発事業者に対して、Facebookユーザーに関する情報を不正に利用していないかどうか、監査(audit)を実行すると発表した。

協力に応じない事業者に対してはアプリの削除も辞さないというものだ。

マーク・ザッカーバーグ〔PHOTO〕gettyimages

そこまで強行策を打ち出さざるを得なかったのは、3月17日に、英米きってのリベラル紙であるThe GuardianとThe New York Timesの2紙によって公表されたCambridge Analyticaスキャンダルのためであった。

Cambridge Analyticaは、2016年のアメリカ大統領選の際、トランプ陣営に勝利をもたらした「データ解析型選挙キャンペーン会社」としてつとに知られていたが、よりにもよって、そのキャンペーンで利用したユーザープロファイルの基本情報が、2014年にFacebookを通じて不正に入手されていたものであった疑いが発覚した。

告発したのはCambridge Analyticaの元社員で、同社が採用したデータ解析モデルの提案者でもあったクリストファー・ワイリーだった。

クリストファー・ワイリーCambridge Analyticaの元社員クリストファー・ワイリー〔PHOTO〕gettyimages

髪をピンクに染めたいかにもロンドナー(ロンドンっ子)的なパンク風の彼の風貌もあって、このスキャンダルはあっという間に世界中に広まった。

 

3月17日は土曜であったため、週が空けた月曜の19日には、非難の矛先はFacebookに向かい、Facebookの株価は暴落し、一時は時価総額にして50億ドルを失った。

Facebookの創業者CEOであるザッカーバーグに対しては、彼自身が事実上、Facebookの最大の広報官でもあることもあり、17日の直後から公式の会見が求められていたのだが、結局、彼が表舞台に現れたのは報道から5日目の21日だった。

そのため今度は「対応が遅い」という非難も生じ、いつの間にかアメリカの報道の多くはFacebookの行く末、もっといえば、いかにしてFacebookを規制すべきか、という話題に収斂していった。

しかし冷静になってみると、この流れは少しばかりおかしい。端的に勇み足のように見える。

なぜなら事の発端は、Cambridge Analyticaによるデータの不正持出しの嫌疑にあったはずだからだ。

それがいつの間にかFacebookを一方的に糾弾するものへと転じてしまっている。

共和党要人との関係

確かに「スキャンダル」と呼ばれるだけのことはあって、この事件は利害関係が錯綜し、一歩間違えば様々な問題の火種となる要素に溢れている。

もしもCambridge Analyticaが本当に5000万件のユーザープロファイルをFacebookから不正に入手していたのだとすれば、その破壊力は計り知れない。

以下に、このスキャンダルの要点と懸念される余波についてかいつまんで説明しようと思うが、いずれも基本的には3月17日に報道された告発内容に基づいている。そのため今後の調査/捜査によって明らかにされる事実いかんでは、それらの内容が変容しうることを予め指摘しておく。

まず初めに取り上げるべきはCambridge Analyticaと共和党要人との関係だ。

トランプの大統領選勝利に貢献した際、Cambridge Analyticaが利用した有権者データの出処は、共和党員の選挙活動の総元締めである共和党全国委員会(Republican National Committee)だったとされていたのだが、告発内容が正しいとすれば、これは虚偽であったことになる。

Cambridge Analyticaは、本選でトランプ陣営と契約する前は、予備選でトランプと争ったベン・カーソンとテッド・クルーズのキャンペーンに加わっていた。共和党とのつながりは浅からぬものと思われても仕方がない。

そもそもCambridge Analyticaは、ロンドンのコミュニケーション・コンサルティング会社であるSCLの子会社であった。SCLとはStrategic Communication Laboratories(戦略コミュニケーション研究所)の略称であり、イギリスの軍事・諜報部門の支援を事業領域としていた。

その関係から、イギリスではCambridge AnalyticaがBrexitを促す活動(たとえば“Voter Leave”)において何らかの不正を行ったのでは、という嫌疑につながり、それが発端となって3月17日の告発に至った。

新生・ブルーバックス誕生!