不正・事件・犯罪

丸山ゴンザレスが読み解く「フィリピン刑務所暴動事件」の深層

囚人2名死亡、負傷者11名

まるで地獄絵図

2017年11月4日、フィリピンのケソン刑務所で暴動が起きた。その結果、囚人2名が死亡。負傷者は11人にも上った。

死者まで出る暴動。いったい何があったのか?
答えは「水滴がかかったことに怒った囚人が暴れた」とのこと。

謝れば済んでしまいそうな、たったそれだけのことで人が死ぬ。知らない人には「そんなまさか」と思うだろうが、それがこの国の現実だ。実際、私がこのニュースを知った際、の感想は「そりゃあ、起きるよね」の一言だ。フィリピンの刑務所の異常な状況がもたらした当然の結末であろうとも思った。

なぜ当然と思ったのか。私は過去にフィリピンの刑務所の過密状態を取材していたからだ。このことについて補足しておきたい。

私がこの刑務所を訪れたのは昨年5月頃のこと。そこで目にしたのは収容人数800というキャパシティーに対して、2500人以上が収監されているという異常事態だ。

なんのひねりもなく、ただただ「なんだ、これ!」と、叫びたくなるほどの人口密度。10人用の部屋に100人以上がいるのだから、これがいかに異常な状態であるかがわかるだろう。隙間という隙間、スペースがあるところはすべて人で埋まっている。

「彼らと一緒に寝転がってもいいですか?」

 

同行していた看守に尋ねると、「どうぞ」と思いがけない返事が。せっかくなので、寿司詰め状態の箱の、一個の寿司になってみることにした。

横たわると強烈な汗の匂いが鼻にこびりついてくる。体育会系の部室を何倍も濃密にした異臭だったが、それは想定内。南国フィリピンの刑務所である以上は当然のことだ。

横になったことで床から天井へと視線が動いた。すると、平面だけではなく上空のスペースもハンモックなどで覆われているのがわかった。「上空」までも囚人で埋まっているのだ。

部屋に入り切らない囚人は、通路でもどこでも空いているところがあれば、そこに陣取って一日中寝そべっていた。そうでもしないと場所を確保していられないかのようだったのだ。

もとをただせば、彼らは罪を犯したから、その罰としてここにいるわけだ。だが、たとえ囚人であってもストレスは溜まる。この人口過多の環境であれば、さらにストレスが溜まることは間違いない。それが、私が感じた印象だった。

内心では、いつ問題が起こっても不思議ではないなと思っていた。結局その予感は的中したわけだが、「ストレスが原因で殺人にまで発展した」という理解では、この問題の抱える闇の半分を説明したに過ぎないと思う。