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僕が毎月「妻の布ナプキン」で手を血に染める理由

生理ってインフルエンザよりつらい
鈴木 大介 プロフィール

生理中は文字通り這いつくばって出勤

そんなキッカケでお妻様の毎月の生理を観察するようになって暫し。そのうちに、お妻様の生理が遅れているのかいないのか、そろそろ来そうなのかも、本人よりも明確に把握できるようになった。

「そろそろ始まったんじゃない?」

朝(夕方)一番でトイレに駆け込むお妻様に、ドアの外から声をかける。

「大変だ大ちゃん!」

「どうした!?」

「大ちゃんがキモい!!」

キモいはないだろ……。

「だってキモい! 生理来た! なんであたしが生理来るって分かってないのに、あんたが分かるの?」

そりゃもうね……。数日前からフルスイングで君の八つ当たり食らってますから、分かりますよ。

そんなやり取りの中で、僕自身、お妻様の血染めの布ナプがいつ発生するのかも当然分かるようになるわけなのだったが、初めて「俺が布ナプ洗うから、洗面所に置いといて」と言ったときのお妻様の顔は、忘れようがない。

「まじでか大ちゃん!」

「まじでだ。いちいち反応デカくてウザいぞ妻よ」

「……ありがとう……」

え? 確かにこれまで布ナプ洗いはお妻様が自分でやってた。けどそれ以外の洗濯物は全て僕が担当だったでしょ? 俺、20年近く前の同棲開始から今に至るまで、毎日のように君に洗濯して飯作って掃除して、そんな顔でありがとうを言われたことなかったよ。っていうか、どんなプレゼントあげても、そんなに嬉しそうな顔してくれたことなかった。

 

よし、そんな顔されたら、喜んで洗いますよ。ということでいざ洗面台に立ち、お妻様指導のもと、人生で初めて布ナプの押し洗いを始めてからのこともまた、忘れようがないだろう。

なんといっても衝撃なのは、その血の量のリアルだ。血液が凝固しないように、冬でも冷たい水で分厚いコットンを洗う。洗っても洗っても、止めどなく布ナプの内部から流れ出る赤い筋。

とりあえず男の僕がここまでの量の血を流したことは、成人後は数回しかないに違いがない。こんな量の血が肛門から出たら、間違いなく絶叫して119番か病院直行だ。

しかもお妻様に聞けば、彼女は基本的に自力で生理の血が流れ出ることをコントロールできるらしく、その布ナプに染みた大量の血は「やむを得ずうっかり出ちゃった」量だということ。紙ナプキンから布ナプキンに変えた後に覚えたテクニックらしい。「ドプッと一発!」とか軽く言うお妻様だけど、これで一部かよ……。

我が妻が自力で経血のコントロールができるとかもあまり聞いたことがなかったけど、その血の量を知るだけでも、血を含んでずっしりとした布ナプの重量感を手に感じたことだけでも、それは本当に本当に、貴重な体験だったと思う。

おのずと疑問が沸き上がる。男の僕は生理痛を知らないが、こんなにたくさんの血を流していて、つらくないなんてことがあり得るだろうか。いつまでも流れ続ける血を見ながら、頭の中で抜本的理解のドアが開いたような気がした。

こんなもん、つらくないはずがない。けれどつらいなら、どれほどのつらさなのだろうか。想像もつかないよ。なのでお妻様に、こんな質問をしてみた。

photo by iStock

「妻よ、生理とインフルエンザって、どっちがつらい?」

「生理」

即答だった。

でもインフルって、それなりに死ぬかも知れんと思うぐらいにはつらいはず。毎月そんな苦しさがあるってマジか!? お妻様を疑ったわけじゃないけど、同じ質問を生理が結構重いと言っている親しい知人女性らに聞いてみたら、やっぱり即答だった。

「インフルエンザならなんとか起き上がってご飯作ろうとか思うけど、生理はその気力ごと奪う」

「インフルエンザの特効薬はあるけど、生理の苦しさが軽くなる特効薬はない」

「インフルエンザで会社に出たら怒られるけど、生理で休むと『空気読めよ。生理でも働いてる子は働いてるよ』みたいになる」

「ロキソニン飲みまくって誤摩化してますが、ちょっとしたロキソニン中毒ですよマジで」

「インフルよりマジつらい。でも毎月のように休んでたら会社からは『自己管理の出来ない奴』と烙印押されそうで、文字通り這いつくばっても出社してる」

続々発せられる、切実な言葉。マジでなのか……。