野球 週刊現代

甲子園に行ける子は、13歳までに決まっているという現実

ドキュメント 野球エリート
赤坂 英一

元プロの父の熱血指導

そんな〝怪物〟たちに交じって、意外な存在感を発揮しそうな新2年生もいる。来年のドラフトを目指している日大三(東京)の前田聖矢(170cm、73kg、右投げ左打ち)だ。

小柄ながら、昨年4月に東京きっての強豪・日大三に入学し、1年生から外野のレギュラーとなって6番を任されているのだから、いかに図抜けたセンスの持ち主であるかがわかる。

公式戦で初のスタメン出場したのは、昨年10月の都大会3回戦の都立昭和戦。6番・レフトで初安打を打つや、すぐに二盗を成功させ、敵失に乗じて果敢に三塁へ進む機敏さも見せた。さらに準決勝の日大豊山戦では初タイムリーもマーク、「試合に出るチャンスがあったら、どんなことでもやる。チームの勝利に貢献したいですから」。

そう語る前田は元プロ野球選手、ロッテ、中日、巨人などで活躍した前田幸長の次男である。

父親は先発とリリーフの両方をこなす左腕投手として活躍したが、聖矢は野球を始めた小学2年生から野手として育てられた。本人曰く、「投げるほうはあんまり好きじゃなかったんです」とのことだ。

父がそんな息子を中学時代まで鍛えたのは自分の少年野球チーム、都筑中央ボーイズの練習場である。横浜市都筑区東方町の田園地帯にあるグラウンドで、幸長自ら打撃投手となり、息子に向かって懸命に投げ続けた。

そして、黙々とバットを振っている聖矢の姿が、グラウンドにやってきた日大三の小倉全由監督の目に止まったのだ。聖矢がそのときを振り返る。

「監督さんは別の選手を見に来られたんですが、ぼくも声をかけてもらいまして、よし、行くぞ、という気になりました」

体格こそ小柄だが、父の幸長は息子の伸びしろに自信があった。「何かが飛び抜けてすごいわけではないけど、打てるし、走れるし、守れる。全部をひっくるめたセンスがあるから」だ。

この前田二世が根尾や石川を食うほどの活躍を見せ、甲子園を沸かせられるのか、今年の選抜は様々な興味に溢れている。(敬称略)

赤坂英一(あかさか・えいいち)
'63年、広島県生まれ。'86年に日刊現代入社後、野球担当記者を長年務めたのち、'06年にフリーに。著書に『失われた甲子園』『プロ野球「第二の人生」』『すごい! 広島カープ』ほか

「週刊現代」2018年3月31日号より

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