Photo by iStock
企業・経営 パワハラ

ある日突然「パワハラ加害者」にならないための部下・後輩の指導法

「無意識の犯罪」はこうして起きる
年々会社のハラスメントマニュアルは分厚くなり、少し厳しく注意しただけで「パワハラです!」と指摘される時代。部下や後輩を叱れない、どう指導すればいいか分からないと悩む方も多いだろう。
ブラック企業アナリストで組織内のハラスメント事情にも詳しい新田龍氏が、「パワハラ」が起きる背景、理想の指導法、パワハラだと言われた時の対策などを解説する。

こんなケースが「パワハラ」になる

早速だが、次の3つのケースを見てほしい。

・社員研修終了後の懇親会の席上、スピーチの中で上司がある部下のことを「俺が仲人をした○○は、頭はいいが出来が悪い」、「何をやらしてもアカン」などと評した。

・以前より仕事を覚えるのが遅く、勝手な手順で作業を進める後輩が起こしたミスに対して、普段から荒い言動をするタイプの先輩が「いい加減にしろよ」という程度の意図で「殺すぞ」と叱責した。

・有休取得を申請した部下に対して、上司が「お前は今月末にも休暇をとるのに、さらに有休までとるとは非常に心象が悪い。どうしてもという理由があるのか」とメールを送り、かつ口頭でも「こんなに休むなんて、会社にとって必要ない人間ではと上層部に思われるし、俺も否定できない」と発言。結果として、部下は有休申請を取り下げた。

Photo by iStock

人によって捉え方は違うだろうが、これらはいずれも、過去に実際の裁判で「パワハラ」と認定されたことばかりである。この程度のことなら自分もやっている、もしくは自社で似たような事例を見聞きしたことがある、という人は要注意と言える。

昨年末に大きく報道された相撲界の暴行事件に続き、レスリング界においても伊調馨選手が元指導者を告発するなど、連日の報道によって「パワハラ」への関心は高まるばかり。もちろん、一般のビジネスパーソンにとっても、決して他人事ではない。

あなたは、自身が気づかないうちに「パワハラ加害者」になっていないだろうか。「自分に限ってそんなことは絶対にない!」と言い切れる人ほど、実は危険である。今回はその理由と、パワハラ上司、先輩にならないための処方箋を提供しよう。

 

「パワハラ」の定義をおさらい

基本的な知識として、厚生労働省では、職場でのパワハラをこのように定義している。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいう。上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる」(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ 2012年)

注意すべきは、「上司―部下間」のみならず、「同僚間、部下から上司に対して」といったケースもパワハラに含まれることだ。パワハラの範疇は、あなたの想像より広いかもしれない。

同省ではまた、パワーハラスメントの典型例を以下の通り示している。

(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

「今どき暴力や暴言なんて…」という人も、「過大要求」「過小要求」「個の侵害」までがハラスメントと言われると、相手の捉え方もあることだから、「絶対ハラスメントなどやっていない!」と自信をもって言い切れるかどうか迷うところだろう。

とくに日本的な感覚として、「理不尽な状況やストレスへの耐性がある」=「我慢できる」ことが大人であり、また「自分も苦労したんだから、相手も苦労して当然」といった論調が受け容れられる傾向があることに注意したい。

新生・ブルーバックス誕生!