〔PHOTO〕wikipedia
美術・建築 ライフ

ドイツで発生、とある詩を巡る「芸術か性差別か」論争が提起するもの

ちょっと行き過ぎなのでは…?

「一人の賛美者」の性欲

オイゲン・ゴムリンガー(Eugen Gomringer)は1925年生まれの詩人だ。スイス人の父親とボリビア人の母親を持ち、主にドイツで活躍している。

ベルリンのアリス・サロモン専門大学の鉄筋校舎では、外壁の大きなスペースに、ゴムリンガーの詩が書かれている。2011年、彼が同大学のポエジー賞を受賞したからだ。

壁に書かれている詩はスペイン語で、題名は「並木」。

avenidas
avenidas y flores

flores
flores y mujeres

avenidas
avenidas y mujeres

avenidas y flores y mujeres y
un admirador.


並木
並木と花


花と女

並木
並木と女

並木と花と女と、
一人の賛美者

芸術的に訳せないのは、ひとえに私の詩的才能の欠如によるが、並木と花の風景の中にいる女を、焦がれを胸に秘めて眺めている男の心の高まりは想像していただけると思う。

ところが、この詩は女性を性欲の対象としており、女性差別であるとして、去年、学生たちに訴えられてしまった。

問題の壁〔PHOTO〕wikipedia

これには驚いたが、もっと驚いたのは、今年1月になって、同大学が多数決でそれを認め、校舎のリフォームの際にこの詩を塗りつぶすと決めたことだ。

 

女性を憧れの目で眺めることが、女性を性欲のはけ口としていることになるなら、絵画も小説もすべて嫌疑がかかる。それに、男であれ、女であれ、好きな相手を性欲の対象と見なければ、人類はそのうち滅びる。

案の定、ゴムリンガーは憤慨し、ドイツ・ペンクラブも、これは表現の自由の抑圧であると警告した。

そういえば最近、イギリスのマンチェスター・アート・ギャラリーが、展示してあった絵を1枚、外したというニュースもあった。イギリスの画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの有名な絵「ヒュラスとニンフたち」だ。

ギリシャ神話の美しい勇者ヒュラスが泉に水を汲みに行き、泉の中から出てきた大勢の美しいニンフ(水の精)たちに誘惑されている場面だが、彼女たちの水から出ている上半身がもちろん裸。

美術館側は、議論を促すために撤去したと説明。絵の掛かっていたところには、メモ帳と鉛筆が置いてあり、客が意見を書いて貼り付けられるようになっていた。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作『ヒュラスとニンフたち』(1896年)。マンチェスター市立美術館所蔵

ただ、これは検閲だという非難が高くなり、数日で絵は復活。美術館側が何を主張したかったのかは、未だにはっきりしない。

そもそも、これが女性差別になるなら、ダビデ像は男性差別? 何だかよくわからない。

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