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現代新書

「なぜうちの商品は売れないのか」と悩む前に磨くべき、ひとつのこと

哲学をビジネスに効かせる方法

「なぜうちの商品は売れないのか?」と質問しても、当たり前の答えしか出て来ないだろう。そんな時、少し哲学的な質問をしてみれば、新たな解決策が生まれるに違いない。そう、ビジネスにこそ哲学は役に立つのだ――『哲学の最新キーワードを読む』の著者・小川仁志氏が、哲学のススメを語る。

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納得いくまで徹底的に考える

4月5日から、哲学の新番組が始まります。タレントの高田純次さんが相談室長を務める「世界の哲学者に人生相談」(NHK Eテレ)です。

私はこの番組で、指南役を担当しています。哲学の番組自体そもそも珍しいのですが、今回は単に知識を紹介するだけでなく、ゲストと共に、また視聴者と共に考える番組を目指しています(皆さんも是非、ご覧ください)。

哲学とは本来、考える営みです。ですから、自分が考えないと意味がないのです。納得いくまで徹底的に考える。それが哲学だと思ってもらっていいでしょう。

よく物事の本質を探究する営みだといわれますが、本質といったって絶対的なものではありません。いや、仮にどこかに絶対的な答えがあるとしても、それが見つかるかどうかは別問題です。

つまり、その本質なるものを追い求めるプロセスが哲学なのです。もともと哲学(フィロソフィー)とは、古代ギリシア語で「知」を意味するソフィアと、「愛する」を意味するフィレインという言葉に由来しているわけですから。

そう考えると、この営みはどんな分野にでも適用可能です。たとえばビジネスにも。

ビジネスの現場では思考することが求められるはずです。もし思考していないとすれば、それはとてももったいないことです。目の前の課題を深く考えることではじめて、よりよいソリューションが導き出せるはずだからです(なかなか忙しくて、じっくり考えていられないのが現状でしょうが)。

あるいは、考えているけれどもいい答えが出ないということもあるかもしれません。おそらくそれは、やり方に問題があるのだと思います。ただ闇雲に考えていても答えが出るものではありません。

商品が売れないのはなぜか? 顧客とのコミュニケーションがうまくいかないのはなぜか? いい企画が思いつかないのはなぜか? 

もちろん、それぞれの現場で、きちんと原因を分析して考えていることでしょう。しかし、哲学するというのは、そういう当たり前のプロセスを踏むのとは少し異なります。

「うちの商品に恋人はいるか?」

哲学は、いわば変な質問をすることで、問題の本質を探り当てるところに特徴があるのです

当たり前の質問をしても、当たり前の答えしか返ってきません。「なぜうちの商品は売れないのか?」と問うても、「人気がないからだ」とか「需要がないからだ」といった当たり前の答えしか返ってこないのです。

もしここで「うちの商品に恋人はいるか?」などと聞いてみるとどうでしょう。明らかに変な質問ですが、無理やり答えることで、意外なものが見えてきます。

さて、皆さんならどう答えますか? 

「商品の恋人」ということは、その商品に異性としての魅力があるかどうかという話になってきますよね。ですので、場合によっては、フェロモンのような物質に目を向ける結果になるかもしれません。

そうやって変な質問をすることで、意外な視点が浮かび上がってくるのです。ここがポイントです。

 

うまくいっていないということは、なにか見えていない問題があるのだと思いますが、それを発見するには、様々な視点で問題を見る態度が必要なのです。それを可能にするのが、変な質問にほかなりません。

そんな質問を無数に問えばいいのです。

ソクラテスは理性の力によって、そうした数々の質問を浴びせかけ、相手の口から本人も気づいていなかった真理を引き出したのです。

これが哲学の始まりです。そうして2000年以上にわたって、哲学は理性による質問を哲学の基本作法として維持し続けてきました。

ところが、昨今新たな問題が発生しています。おそらくこれが、考えてはいるけど答えが出ないもう一つの原因だと思われます。