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全員が「中学受験」てホント!?教育国家オランダ「驚きの」進学制度

日本とはまったく違います

公立小学校の卒業式も終わり、4月から新しく中学に入学する子どもたちは、不安と期待とで胸が膨らんでいることだろう。

学ぶ楽しさを知った上で、新しい学びの場に行くためにあるはずの中学受験だが、中学受験に挑み結果が思わしくなかった子の中には、「勉強はもうしたくない」と自暴自棄になる子も出てくるという。

世界一の教育と認定されたオランダでは、ある意味では「全員が中学受験」をする。といっても単に「入試試験を受ける」のではない。小学校の最初から見続けてきた結果をふまえ、小学校の先生と共に「どの中学に行くべきか」も考える、まったく異なる中学進学制度がここにはあるのである。

オランダ在住で自ら小学生の女の子を育てているライターの倉田直子さんが、日本とはまったくことなる「普通のお受験」についてリポートする。

 

成績表に「謎のグラフ」

「では、お子さんの成績について説明しますので、先日お渡ししていた成績表を出していただけますか?」

筆者の子供が通うオランダの公立校は、年に3回、担任の教師と保護者の面談の場を設けている。移民の子供がオランダ語を学ぶための言語習得学校から一般の公立校へ転入が学年後半だったこともあり、初めての面談は学年末だった。

オランダの成績表。生徒本人のイラストが表紙を飾る 写真/倉田直子

初めての面談に緊張しながらも筆者と夫は、週の前半と後半を交代でうけもつ先生たちに成績表の謎を訊ねてみた。

その謎というのは、先生の評価とは別にグラフのページがあることだった。先生によるとそのグラフは、オランダの小学生が受けている「CITO」という期末テストの結果なのだという。この「CITO」テストは、中等教育に進学する際にも大事な指標になるのだと教えてくれた。

そしてその後も、日本の学校の成績表との違いがあることが分かってきた。一番の違いは、その生徒のそれまでの学年の成績表もファイルに蓄積されているということではないだろうか。

その学期・学年の成績のみならず、生徒の成績の変遷がすべて収められていくのだ。

この成績表を初めて受け取った時が、複雑で意外に厳しいオランダの進学事情に、筆者が初めて触れた瞬間だった。

増え続けている日本の中学受験

日本の中学生は、学区制によって通う中学校を指定されることが多い。東京23区内では地域の中学校の中から自由に学校を選べる「学校選択制」を採用している地域も増えてきているが、文部科学省の平成24年の調査によると、「学校選択制」を採用している中学校は全体の16.3%しかない。学校選択制を採用しない理由は、「学校と地域の連携が希薄になる」という理由が最多の74.4%だった(複数回答可)。

つまり、学区制で指定された中学校に不満がある場合、中学受験という手段をとる以外に手立てがないということになる。

大手学習塾「栄光ゼミナール」が作成した「<速報>2018年中学入試動向」という資料によると、私立中・国立付属中学を受験する生徒が増加しているという。

栄光ゼミナールによると、2018年度の中学受験に、首都圏(1都3県)内の中学を受験した小学6年生は4万7千500人。前年度よりも小学校6年生の数は7千200人減少しているにもかかわらず、受験者数は千人増えたことになるのだとか。私立中・国立付属中学に限ると、中学受験への参加率は16.5%になるという。更に、公立中高一貫校と合わせると首都圏1都3県の中学受験(検)比率は21.91%。4~5人に1人が受験(検)で中学を選ぶ時代なのだ。

ただし受験するとなると、当然お金もかかる上、受験勉強を避けて通ることはできない。同じく大手学習塾「四谷大塚」が実施したアンケートによると、受験期の家庭学習時間は、受験期に限ると「2~3時間」という回答が43%で最多になったという。就寝時間については「22時~23時」が最多の49%。けれど「23 時~0時」(32%)、「0時以降」(5%)という気になる回答も見受けられた。

日本の小学6年生が進路を選ぶ場合には、睡眠時間を削って受験勉強をする必要があるということになる。これは、成長期の子供にとって負担にはならないだろうか。
どうしてそこまでするのかというと、それは1度のテストで合否が決まってしまうから。小学校の学習範囲を超える問題に対応できる知識と応用力が求められるからだ。

実は筆者自身も約30年前に中学受験を経験しているので分かるのだが、子ども自身は塾通いを楽しんでいることも多い。筆者にとって塾は、別の小学校の生徒とも交流しながら勉強できる楽しい環境であった。

ただその塾で、常に模擬試験の成績トップだった秀才少年の第一志望校の結果が不合格という「事件」がおこったのだ。彼よりも普段の模試の成績が振るわなかった生徒たちが続々と合格の報告をする中、その生徒の不合格は塾に衝撃を与えた。どんなに模試の成績が良くても、本番でアクシデントがあると報われないのだと小学生ながらに学んだ記憶がある。そういった一発勝負の進学事情は、子どもにとってすべての努力を否定されるようなショックな出来事にもなりかねない。

そして今年の中学受験を経験した児童が「もう勉強も受験もしたくない」と言っているという話も小耳にはさんだ。より良い勉学の環境で勉強をするために受験したはずが、将来待ち受ける様々な学びに対する拒否反応が生まれてしまった悲しい例だろう。

「将来する経験の先取り」という考え方もあるかもしれないが、まだ幼い子供たちにはもっと別の進学アプローチがあっても良いのではないだろうか。

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