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格安航空「ピーチとバニラの統合」が、驚くほど合理的である理由

結局、ANAの一人勝ち…?

LCC(格安航空会社)2位のピーチ・アビエーションと3位のバニラ・エアが、2020年までに経営統合することが明らかとなった。

詳細なスキームや今後の戦略はまだ分からないが、両社はANAグループの航空会社であり、今回の統合によって、ANAによる市場の独占化が進む可能性が高まっている。現時点で分かっている2社の経営状況から統合の背景や今後の市場動向について探った。

ANAが市場独占に乗り出した

日本に本社を置く、いわゆる日系格安航空会社には、ジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーション、バニラ・エア、春秋航空日本の4社がある。このうちジェットスターとピーチの2社でシェアの約8割を占めており、これにバニラと春秋が続く。

ジェットスターの利用者数は年間520万人、ピーチは513万人なので両社はほぼ互角となっており、わずかにジェットスターがリードしている。

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ジェットスターはオーストラリアのLCCであるジェットスターのグループ会社で、日本航空(JAL)の資本が入っている。一方、ピーチとバニラはANAホールディングスの子会社である。

ピーチはもともとANAグループとして事業をスタートしたが、バニラはアジア最大手のLCCでマレーシアを本拠地とするエアアジアを経営母体としていた。

日本ではエアアジア・ジャパンとして事業をスタートさせたが、業績が伸びなかったことから同社は一旦、日本から撤退。エアアジア・ジャパンの事業をANAが引き取り、社名をバニラに変更し、結果的に同社もANAグループとなった。

各社の中で、もっとも好業績だったのがピーチである。同社は2014年3月期に早くも黒字転換を果たし、2016年3月期には累積損失を一掃している。

 

これに対してジェットスターは、旅客数こそ伸ばしてきたが業績はなかなか改善しなかった。2016年6月期にようやく黒字化に成功し、利益体質への転換を進めている最中である。

今回の統合は、トップの座をジェットスターから奪いたいピーチが、3位のバニラを取り込んだ形であると同時に、ANAグループの2社が組むことで、JALの資本が入ったジェットスターを引き離すという図式でもある。

かつての航空市場は、各国を代表する従来型の航空会社(いわゆるナショナル・フラッグ)がリードしていたが、LCCの普及で状況は一変した。

売上高こそ従来型航空会社のシェアは大きいが、乗客数では米サウスウェスト、欧州ライアンエアー(アイルランド)、英イージージェットなど、LCCの存在感が極めて大きくなっている。日本はLCCの普及が進んでいないが、逆に言えば、今後、市場を拡大できる余地はLCCしかないともいえる。

ANAはすでに旅客数でJALを大きく上回っており、JALとANAの立場は逆転した。ここでANAがLCCを取り込んだということは、ANAが市場独占に向けて大きく舵を切ったと考えることもできる。

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