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公文書先進国イギリスでは「森友文書問題」はこう報じられている

改ざんより「首相の政治生命」に焦点
小林 恭子 プロフィール

英国「公文書管理」の歴史

そんな英国の公文書管理の状況を見てみよう。

英国に現存する最古の公文書は、11世紀に作成された土地台帳だ。1066年、フランス北西部ノルマンディ公国の領主ギョームがイングランド王国を征服し、ウィリアム1世として王国を統治した。

その約20年後、ウィリアムは全国土で誰がどの程度の規模の土地や資産を持っているかを把握するために、土地台帳の制作を命じた。これに記載された土地の所有状況は、その後数世紀に渡って裁判の証拠として使われた。

英国の政治家が公文書の保管と成立について本腰を入れだしたのは、19世紀である。

調査のための委員会が設置されたのは1801年だが、最終的に議会の特別委員会が国立の公文書館の設置を提言するまでには30年余を要した。

現在の英国国立公文書館の前身となる「パブリック・レコード・オフィス」(PRO)が設置されたのは1838年だが、国民のアクセス権は明記されていなかった。

英国国立公文書館の外観(筆者撮影)

1958年の公記録法によって、50年を経た公文書に国民のアクセス権があることが初めて明文化された。PROは1967年に名称を「英国国立公文書館」(The National Archives=TNA)に変更し、1977年、ロンドン中心部から南西部キューに移動した。

文書作成から公開までの年数は当初の50年から、1967年には30年に、2013年からは20年に縮小された。

2005年には「情報自由法」(日本などの情報公開法に相当する)が施行され、市民は公文書が作成されるとすぐに閲覧を請求する権利を得た。

 

「公文書=みんなもの」という意識

筆者は、過去数ヵ月、『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』(中公新書ラクレ)執筆のために、ロンドンのキューにある英国国立公文書館に足繁く通った。

公文書館では身分を証明する書類を持っていけば、その日のうちに読者カードを発行してもらえるので、様々な歴史的文書の原本をすぐに手にとって見ることができる。

館内の書庫の様子(筆者撮影)

閲覧したい文書はネットで訪問の前日までに申請しておくと、当日、閲覧できるよう準備される。訪問日に館内のコンピューターで閲覧申請をすれば、40分ほどで文書が届く。書庫ツアーや歴史的文書を紹介するイベントが数多く開かれている。

利用するたびに、「みんなのための公文書」という意識が公文書館のサービスから伝わってきた。日米英の公文書館を利用した経験がある知人によれば、英国の公文書館の資料検索サービスは非常に使いやすいという。

確かに、公文書館自体は使いやすい印象を筆者は持っているが、近年、公文書管理を巡る問題も指摘されている。

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