7月参院選 民主も自民も
「都市部で壊滅する!」

 4月24日、25日の土曜、日曜日。鳩山由紀夫首相(63)は生きた心地がしなかったに違いない。あまり知られていないが、この両日、新聞社ではなく民主党が独自に世論調査を行ったのだ。調査会社の協力のもと、全都道府県への電話調査が1000~1500件、各選挙区で行った対面式の聞き取り調査はそれぞれ100~200件に上った。

 7月参院選5人区の東京、3人区の大阪など大都市圏は特にサンプル数を増やすという念の入れようである。そして、この大規模調査を命じたのは、もちろん小沢一郎幹事長(67)であった。

 その結果は後述するとして、小沢氏が大規模調査で知りたかったことの一つは、新党結成ラッシュによって、票がどれくらい分散するかについて、であった。特に、直前の4月23日には、「総理にしたい政治家」断トツ1位の舛添要一前厚生労働相(61)が自民党を離党し、「新党改革」を立ち上げたばかりだ。

「いやいや、舛添君のおかげで小沢君は幹事長留任だ。舛添君には小沢君から感謝状が届いているんじゃないの」

 渡部恒三元衆院副議長が、皮肉混じりに言うのも無理はない。自民党執行部を批判し続けた末に矢野哲朗、小池正勝の両氏を連れて離党し、改革クラブに合流。これでは党名と代表者をすげ替える"乗っ取り"である。

 改革クラブの政党交付金目当てだろうが、同クラブの荒井広幸氏も、連れてきた面子も、夏の参院選が改選のため舛添人気にあやかりたいところ。カッコツケてみても、メリットのある者同士の野合に過ぎなかったのだ。

 以上の理由で、小沢氏にしてみれば、半端な新党立ち上げで自民党を崩壊に近づけた舛添氏に感謝、というわけだ。

自宅前で舛添氏を直撃。家族と小旅行に行っていた(4月24日) 〔PHOTO〕片野茂樹

 厚労省のキャリア官僚がこう漏らす。

「山本一太が『舛添さんを活用しないのは、党として本当にもったいない』なんてヨイショしていたが、フタを開ければ若手は誰もついていかなかった。でも、それは、舛添さんという政治家の人間性のほうにも大いに問題があるんだよ」

 この厚労省キャリアは、舛添氏の性格を如実に伝えるエピソードを明かした。

「3月末、森(喜朗)元首相の仲介で舛添さんは谷垣(禎一)総裁、大島(理森)幹事長に会い、選対本部長のポストに就かないか打診されたのですが、人寄せパンダになることを嫌って話を蹴りました。その後、舛添さんは自身の後見人である青木幹雄(前参院議員会長)さんに接触し、参院議員会長のポストをねだったのですが、断られました。
  4月25日に舛添さんの新しい著書が発売されましたが、その中で青木批判を展開しています。気に入らなければ批判、利用できると思えば擦り寄る。舛添さんの身勝手な性格は自民党内で知れ渡っているから、誰も一緒の船に乗ろうとしないんです」

相変わらず存在感が薄い谷垣禎一総裁と、河野太郎氏(左) 〔PHOTO〕鬼怒川 毅

 小沢氏が気に病んだ舛添新党は、とりあえず警戒対象にならなかった。だが、小沢氏にも鳩山首相にとっても、それ以上に頭の痛い現実が突きつけられた。冒頭で紹介した世論調査の結果である。

 現在、総定数242議席に対し、民主党の現有議席は116(会派離脱中の江田五月議長を含む)。過半数の122議席に6議席足りない。非改選議席62、改選議席54なので、単独過半数を取るには60議席以上を獲得する必要がある。

 だが、民主党の複数の関係者を取材した結果、世論調査の結果は「改選54議席±5」だったようで、地滑りが予想されるというのだ。自民党はもっと悲惨で、40前後と、改選議席にとても届きそうにない結果だった。

 最大の問題は「まだ投票先を決めていない」という回答が50~60%に上ったことだ。みんなの党は東京、神奈川、愛知など都市部の選挙区に、他の新党も大都市圏には有力候補を立てる。

 投票先を決めていない層は新党に流れ、特にみんなの党は「10議席を超えることもある」との調査結果まで出たという。民主も自民も、都市部で壊滅的打撃を受ける可能性が高いのだ。

「普天間基地の移設と高速道路無料化というマイナス材料が重なったから・・・」

 民主党幹事長室の関係者は釈明するが、東京選挙区の聞き取り調査では「事業仕分けはただのパフォーマンス」「マスコミ受けだけ」と手厳しい評価ばかりが寄せられた。東京で立つのは、その事業仕分けで名を馳せた蓮舫議員である。

 高速道路料金をめぐり、実質は値上げと言える新制度を提案した前原誠司国土交通相に小沢氏がNOを突きつけ、党が内閣を引っ掻き回す事態が再び起きている。民主党惨敗も、まんざら「ない話」ではなくなった。追い打ちをかけるように、4月下旬には、政治とカネの問題で不起訴処分となった小沢氏に対する検察審査会の判断が出ると見られる。

「ここまで数字が悪いと、衆院選の準備ができていない自民党と新党をつぶすための衆参ダブル選挙など無理。いよいよ小沢さんは、鳩山首相に引導を渡し、別の人間をトップにして参院選に臨むのではないか」(前出・幹事長室の関係者)

 有権者は揺れている。それは、民主か、自民かという選択に迷っているのではない。投票行動そのもの、つまりは今の日本の政治家たちを見限るか、否かの判断に迷っているのだ。4月24日、本誌が舛添氏を自宅で直撃すると、雄弁に語った。

「自民党の幹部は私に、『普天間で鳩山がコケたら、首相は菅(直人財務相)か岡田(克也外相)に替わる。その時は谷垣を降ろして、あなたが総裁。その時まで待ちなさい』と言うわけです。私は『谷垣では参院選に勝てない』と言っているわけで、話が噛み合わない。なくなる政党の総裁をやっても仕方ないでしょう」

 自民党を飛び出した理由について語った舛添氏は、新党のあり方にも言及した。

「目標議席数は、できる限り多く。議席を取らないと小沢がマジョリティを奪い、日本が終わってしまいます。渡辺喜美の『みんなの党』と私と、どこが違うか。俺は小沢一郎を最大の敵だと思っている。ところが喜美は小沢と組んでもいいんですよ。そこが彼とは全然違う」

 舛添氏の憤りは、今のところ一番人気の新党への牽制球にも見える。いずれにせよ、夏の参院選がさらなる政界再編の幕開けになることは間違いなさそうだ。

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『みんなの党』渡辺喜美代表が激白「民・みん連立」の条件

「4月15日に自民党の全議員懇談会で舛添さんが『オオカミ中年は出て行け』などと、ボコボコにされた。実はその時にかわいそうになって電話したんです。『離党する時は一人でしたほうがいい。アジェンダ(行動計画)を高く掲げたほうがいいですよ』とアドバイスしたんです。

 新党を作るのは大変ですよ。次から次へと現実的な問題が起きてきます。そうなると、新党作りの実務マニュアルで頭の中がいっぱいになる。そんな時、『新党を作るよりは、改革クラブにいったん入党して党名を変えれば新党と同じことになる、舛添さんが改革クラブを乗っ取ったと同じじゃないですか』と言われると、そうかという気になってくる。舛添さんはそのワナに陥っちゃいました」

「鳩サブレー」を民主党の・鳩・に見立ててパクリ。同じ明治期からの銘菓と名家だけどオイシさは大違い 〔PHOTO〕足立百合

 『みんなの党』の渡辺喜美代表が自民党を離党した時は一人だった。

 それから1年3ヵ月、『みんなの党』は支持率(毎日新聞4月19日付朝刊)で民主党の23%、自民党の14%に次いで8%と高く、渡辺代表のボルテージは上がるばかり。

 参院選で民主党が過半数を制するのが難しいとの予測もあり、すでに「民・みん連立」が取りざたされ始めた。

 また『たちあがれ日本』のチアーボーイ・石原慎太郎都知事が第3極統一戦線を呼びかけ、『みんなの党』は存在感を高めている。

「舛添新党には大義も戦略も感じられない。新党作りで一番陥ってはいけない数合わせに走ってしまった。集まった5人の半分以上が引退組とか公認漏れの方々ですよね。党(パーティ)と言っても、次の参院選でお別れするフェアウェルパーティです。つまり送別会新党ですね。

 4月初旬に『改革クラブ』(当時)の荒井(広幸幹事長)さんから『近々会いたい』と留守電が入りました。何かありそうだなあと思って、返事をペンディングにしておいたんです。そしたら新党でしょ、荒井さんは第3極連合みたいなものを作ろうということだったんでしょう。応答しなかったおかげで、巻き込まれずに済みました(笑)。参院選までは、新党はみんなライバル、敵ですよ。

 我々は安易な連立組み替えには応じません。申し入れがあったら、呑めるのか呑めないのかと、我々のアジェンダ『脱官僚』『地域主権』『生活重視』を突きつける。連立するなら、口ばかりの政策ではなく与党・民主党にアジェンダをどうやって実現するのかという担保を求めます」

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