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ライフ

感情にまかせた「叱りっぱなし」が子どもをダメにする

世代間連鎖を防ぐ子育て論(9)

大声で怒る母親

最近気になるのは、電車内や駅の構内、スーパーマーケット、街角などで、子どもを大声で叱りつけている母親(ときには父親)の姿です。叱りつけるというより、怒っているというほうがぴったりきます。

それも子どもに対しての怒り方とは思えないようすで、おとな同士でしか使わないような言葉遣いで怒っているので、周囲の人たちは一様に引いてしまい、聞こえないふりをしたり、見て見ぬふりをしたりしています。

 

ある母親は、パン屋さんの店先で、2人の子どものうち弟(4歳くらい)を叱りつけていました。

「なんでなの! いつも言ってるじゃない、どうしてパンにさわったの、なんど注意したらわかるの、黙ってたらわからないじゃない、理由を言いなさい、どうしてあんなことしたの!」

たぶん、トレーとトングを持ってパンを買っているあいだに、下の子どもがおいしそうなパンに指で触れたのでしょう。そのことを、店を出たところで母親は責めているのです。

通りかかった人たちもあまりの大声に驚いて足を止めるのですが、すぐに「どうしようもない」といったふうに視線をそらして、通り過ぎます。

私もそのひとりだったのですが、もしも「そんな大きな声で叱らなくてもいいじゃありませんか」などと割って入ろうものなら、矛先がこちらに向かいそうな勢いだったのです。

仮にそのときは「すみません、子どもがあんまり言うことをきかないので」と返答したとしても、帰途には子どもへの攻撃が倍増したでしょう。

「○○のせいで知らないおばさんからママが責められたじゃないの。あんなことするから、ママがつらい思いしたじゃない」

彼女は「どうしてこんなことをしたの!」と叫びながら、「なぜこんなに私を苦しめるのか」「なぜ自分を困らせるのか」と子どもに訴えているような気がするのです。

生まれて3年か4年しか経っていない子どもに対して、それはあまりに重すぎる問いかけではないでしょうか。

身を震わせて怒る姿を動画に撮って、時間が経ってから母親本人に見てもらったらどんな感想を抱くでしょうか。

本人たちはたぶん叱っているつもりなのでしょうが、果たしてどうでしょう。

怒りの温度計

「感情的になった母親はひどい」と考えると、「感情的になってはいけない」「怒ってはいけない」と、抑制しなければという気持ちになるかもしれませんが、そこには少し誤解があります。

たとえ否定的な感情だったとしても、湧き上がる感情そのものに良い悪いはないのです。

どんな感情が湧いてきても、それを認めましょう。すべての感情がOKなのです。自分の抱く感情がどんなものかを自覚していることが何より重要です。

「ああ、今とっても怒っているな」「つらいなあ」「がまんできなくなってる」といったように、自分の感情を自覚してウォッチ(観察)できるようにしましょう。

私もかかわっているDV(ドメスティック・バイオレンス)に関連するワークショップなどでは、「怒りの温度計」という比喩を用います。

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「今37度だ、でもこのままの状態を続けると40度を超えてしまう」というように、自分がどこまで怒りを抱いているか、怒りの程度をウォッチするのに温度計の比喩は役立つでしょう。

子どもが小学生以上の年齢なら、親子で「怒りの温度計」の知識を共有することもできます。自分が感情的になったとき、「ママ(パパ)の温度計、今何度?」と子どもから質問されることで、ハッと冷静になったという体験を多く聞きます。

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