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「アディーレ法律事務所」とはいったい何だったのか

揺れる弁護士業界のいま

悪貨は良貨を駆逐する。しかし時代が必要とすれば、それは悪貨と呼ばれなくなる――。

「◯万円もの過払い金が戻ってきた」そんな過払い金請求のCMをご覧になった方もいるだろう。債務整理・借金返済をメインとする弁護士法人「アディーレ法律事務所」に対し、2017年10月に業務停止処分が下った。

今年に入って業務を再開した彼らは、はたして弁護士界の〈風雲児〉として復活するのか、それとも、ただの〈ならず者〉として、このまま葬り去られるか。「弁護士とは何者なのか」という問いもふまえて、未だ議論の分かれる弁護士界の声から、この問題を考えてみたい。

著者・秋山謙一郎氏の新刊。詳細に弁護士界の実情をルポ。弁護士に何が起きているのか。

アディーレは何が問題だったのか

消費者金融業者への過払い金返還請求の着手金無料もしくは割引キャンペーンを「1カ月限定」と宣伝しながら、同じサービスを5年近く続けたという景品表示法違反(有利誤認)で、昨年10月、弁護士法人「アディーレ」に業務停止2ヵ月、元代表弁護士の石丸幸人弁護士個人には業務停止3ヵ月の処分が東弁(東京弁護士会)から下された。

これが世にいう「アディーレ事件」だ。すでに処分が明けて今年から活動を再開したアディーレに対し、法曹界では「期待」と「批判」という相反する2つの声が今なお渦巻いている。

アディーレ法律事務所の広告を一度は見たことがあるだろう(写真:アディーレ法律事務所ホームページより)

処分から1ヵ月後、一部メディア関係者の間に、こんな情報が駆け巡った。

――東弁がアディーレを追加で処分するらしい。

結局、ガセ情報だったが、「単位会」と呼ばれる各都道府県弁護士会の会長を経験した関西の50代の大ベテランのひとりは、眉をひそめつつ次のように語った。

「(ある刑事事件の裁判について、確定した判決がある場合には、再度審理しないという)一事不再理の原則もある。一度、処分したものを、また改めて処分しなおすことは法律家としてどうなのだろう。ちょっと(アディーレが)可哀そうかなという気もする」

今、法曹界では意外にも"アディーレ擁護"派が趨勢となりつつあるのだ。

 

2004年の開業から17年の処分時まで、それまでの旧態依然とした個人商店的な弁護士ビジネスにはなかった徹底した〈組織力〉と〈マーケティング力〉を駆使するアディーレは、いわば業界の"鼻つまみ者"だった。ところがここ数年来、その風向きは大きく変わってきた。

前出の大ベテラン弁護士はその事情をこう明かす。

「あまりにもアディーレは大きくなった。"出過ぎた杭は打たれない"ということ。それに批判の声もあるが大局的にみれば、彼らも弁護士界に貢献しているという事実もある」

彼が指摘する「彼ら(アディーレ)も弁護士界に貢献」とは、若手弁護士の「雇用」、これに尽きる。

1999年以降段階的に推し進められた司法制度改革は、市民が容易に司法サービスを受けられるよう司法試験合格者数を大幅に増加させた。

改革以前は例年500人程度だった司法修習生採用も、2001年司法修習修了の54期生からは750人、以降、徐々にその数は増えてゆき、初めて「新司法試験(現行)」合格者が世に出た2007年司法修習修了の60期生に至っては、旧司法試験での合格者も含めてその数は2367人にのぼる。以降、司法修習修了者数は、概ね2000人台を推移している。

その約2000人の司法修習修了者のうち、任官(裁判官)する者は毎年100人程度、任検(検察官)70、80人といったところだ。それ以外の者はすべて弁護士登録する。毎年、約1800人の新人弁護士が世に出る格好だ(いずれも『2017年版弁護士白書』参照)。

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