Photo by GettyImages
野球 週刊現代

ヤクルト・宮本慎也の持論「若手に優しい上司が組織をダメにする」

彼らに一円でも多く稼いでほしいから

5年ぶりにコーチとして戻ってきた〝鬼軍曹〟が、低迷するヤクルトを早くも変えつつある。その厳しさゆえ「古臭い」「時代錯誤」などと言われても、この男の野球に対する信念はビクともしない。

ケガ人が出てもしかたない

「声、出せ!声を!」

沖縄・浦添市民球場の空気は例年とは一変していた。2月1日から約1ヵ月にわたって行われたヤクルトの春季キャンプ。昨季、球団史上ワーストとなる96敗の汚名を払拭すべく、初日から飛んだ宮本慎也ヘッドコーチの怒声に、選手たちは表情をこわばらせた。

宮本ヘッドの目には、選手たちの硬直した体が小さく映っていた。萎縮がその理由のすべてではない。

「ウチの選手、体が小さいでしょ。他の球団の選手はみんな体がデカい。スタートの時点で負けているんです。やっぱりもっと体を大きく、強くしないといけない」

2013年に現役引退して以降、4年間、評論家として外から古巣を見てきた。ときには「いまのままではヤクルトは強くなれない」といった苦言を呈したこともある。

「まずキャンプが緩かった。このままだと大きな歪みが生まれる。そう感じていました。それは僕だけでなく、他の評論家も言っていましたから」

宮本ヘッドは小川淳司監督の下、キャンプ初日から異例の10時間以上の練習を敢行。組織を変えるために一体感が必要だとし、ベテランたちにも足並みを揃えてスタートを切らせた。

「ベテラン勢には我慢してもらっています。本当は任せてもいい年齢の選手でも、チームを変えていかなければならない状況の中で、若手と一緒に頑張ってもらっています」

 

ベテランの取り組みには目を引くものがあったが、若手の扱いは苦心の連続だという。

宮本ヘッドによる若手の意識改革は春のキャンプに先んじて、昨秋の愛媛・松山キャンプから始まっている。ここでも、若手のリーダー格、山田哲人に、「ケツをつけて座るな!ここはグラウンドや!」と一喝。

空気は一変した。「しんどいのがキャンプ」と語る〝鬼軍曹〟の下、若手は連日、12時間近い練習を行った。ゆとり世代だろうが、過保護に扱うつもりは、さらさらない。

「ケガ人を出さないように、というのはあまり考えていません。ケガをさせないように気を遣って結局、ケガをしてしまえばプラス材料は出てこない。はっきり言ってケガ人が出てもしかたないと思ってやりました。

ケガをしろとは言いませんが、ケガをすることで、プロでキャンプからシーズン終了まで一年間プレーするには、もっとこういう部分を鍛えないといけないとか、気づきがたくさんある。それが選手たちの土台を作っていくんです。

幸い、ケガ人は秋に投手1人、野手1人。この春もいったん外れたというのはありましたが、それも数人でした」

フィジカル面は希望を見出すことができた一方で、難しさを突きつけられたのがメンタルの甘さ、プロ意識の低さだと言う。

「秋のキャンプが終わったとき、春のキャンプまでに筋肉量を3kg上げてこいと課題を与えたんです。容易なことではないんですが、それくらい脅かさないとやらないと思っていましたから。

いざ、2月1日を迎えて、プレーの動きに関してはしっかり練習をやってきたというのがわかって大満足だと伝えましたが、体の大きさという部分では大いに不満が残ります」

新生・ブルーバックス誕生!