Photo by gettyimages
メディア・マスコミ 国際・外交 選挙 web 大統領選 国家・民族 アメリカ

日本も他人事じゃない…?他国による「選挙操作」はこうして行われる

ロシア疑惑が示す「民主主義の限界」

米国民になりすましたロシア人

2016年の米大統領選挙におけるロシア政府とトランプ陣営の共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」を捜査しているロバート・モラー特別検察官は、2月16日、「13人のロシア人と3つのロシア企業を起訴した」と発表しました。

37ページにわたる起訴状によれば、このロシア人の被告らは米国人になりすまし、YouTube、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターといったソーシャルメディアを活用して、米大統領選挙に介入したといいます。

彼らの活動拠点は、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクにある「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」という企業です。

IRAは「大統領選挙をはじめ、米国の政治及び選挙に介入して、不和の種をばらまくこと」を戦略的目標にしていました。深刻化する米国社会の分断に、ロシアが関与していることが明らかになってきたのです。

公開された起訴状には、彼らの「手口」が詳細に記されています。

彼らはソーシャルメディアに何百ものアカウントを開設し、トランプ陣営の関係者を含む米国人とコミュニケーションを図っていました。例えば「マット・スキバー」という架空の人物になりすまして、トランプ陣営の選挙事務所などにアプローチしていたのです。

Photo by gettyimages

さらには、米国人の社会保障番号と誕生日を盗み出して口座を開いたうえ、ペイパル(PayPal)を使って、彼らの背後にロシア政府がいるとは知らずに協力していた米国人に謝礼を支払っていたことも、起訴状に明記されています。

このロシア人の被告らに雇われた協力者は、昼夜2交代制で、インターネット上にヒラリー・クリントン元国務長官、トランプ氏と共和党予備選挙を戦ったテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)を中傷する情報を流していました。一方、バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)とトランプ大統領に対しては称賛する情報を掲載していました。

その際、被告らは「移民」「人種」そして「宗教」という3つの争点に焦点を当てたといいます。これらが、米国社会を分断させるのに最も有効な争点だと判断したわけです。

例えば彼らは、「ヒラリーはイスラム法を支持している」というメッセージをネット上で拡散しました。また一方では、ヒラリー氏の支持団体に所属する運動員を装って、「米国系イスラム教徒を救え」という政治集会を開くよう、有権者に呼びかけまでしています。

こうした情報戦を展開したロシア人の被告らの中で、中心的な役割を果たしていたのが、プーチン露大統領と親しく、クレムリンのケータリングを担当するレストランの経営者、エフゲニー・プリゴジン氏でした。同氏は「プーチンの料理人」との異名を持つ男です。

 

「パープル・ステート」を標的にせよ

米大統領選挙の際には、共和党が強い州を「赤い州(レッド・ステート)」、民主党が強い州を「青い州(ブルー・ステート)」と呼びます。共和党のイメージカラーが赤、民主党のそれは青だからです。

一方、どちらの党が勝利を収めるか明確でない、いわゆる「激戦州」は、「揺れる州(スイング・ステート)」ないし「紫の州(パープル・ステート)」といいます。赤と青を混ぜると紫になるからです。

起訴状によれば、ロシア人の被告のうち2名はビザを取得して渡米し、ネバダ州、カリフォルニア州、ニューメキシコ州、コロラド州、イリノイ州、ミシガン州、ルイジアナ州、テキサス州、ニューヨーク州で情報収集を行っていました。

被告らはこの情報収集活動中、テキサス州に拠点を置く共和党支持の草の根運動団体の米国人から、「パープル・ステートに焦点を当てろ」とのアドバイスを受けました。その後、彼らは大票田でありパープル・ステートでもあるフロリダ州、オハイオ州、ペンシルバニア州の3州を標的にして作戦を展開します。実際に大統領選挙では、トランプ氏がこれらの3州でヒラリー氏に勝利しました。

では、ロシア人の被告らはこれら3州でどのような情報操作を行い、トランプ氏をサポートしたのでしょうか。例を挙げてみましょう。