この国はもう復興を諦めた? 政府文書から見えてくる「福島の未来」

復興の成果を自画自賛しているが…
山下 祐介 プロフィール

イノベ、再生可能エネ、オリンピック……

指摘したいことはまだまだあるが、そろそろまとめに入ろう。

平成24年12月に第二次安倍政権が民主党政権から引き継いだ復興政策。すでにこの時点でこの復興政策には様々な矛盾が内包されていた。

そしてそうした矛盾した政策の現場にいた人々は、民主党から自民党に政権が移ったことで、「これで安定した回路に戻れる」と大いに期待したようにみえる。

そもそもそうした期待が広く国民にもあって、このときの自民の勝利につながったとさえ分析できそうだ。

だがその路線は大きくは変わらなかった。それどころか、さらにその矛盾を拡大させ、あらぬ方向へと展開していったと、私には見える。

いやそれでも第2次安倍政権の段階までは、それほど大きな変化はなかったのだ。

〔PHOTO〕gettyimages

第3次安倍政権へと引き継がれていく中で、何か目に見えない変化が水面下で生じ、どこかの時点でハッキリと「急げ」「終わらせよ」「成果を上げよ」と、そういうスイッチが入ったようだ。

だがすでにこじれてしまった復興政策は、どんなに進めても、ボタンを掛け違えたまま、まともなものには戻らない。

本来はそれを頭から見直すべきだった。

だがこの矛盾した政策をゴリ押ししているうちに、おそらく何かの閾を越えて、丁寧な復興から一点突破的な強引なものに変わり、しかも「やってきた政策は無駄ではない」「復興は進んでいる」とその成果を誇張するようになっていった。

政策や事業の結果を反省し調整するどころか、現状を批判することすらできなくなってしまったようだ。

 

一体どこでこんなスイッチが入ってしまったのか。

そのきっかけの一つとして思い当たるのが、平成25年9月に決まった東京オリンピックの2020年招致である。

その後、「東京オリンピック2020」の文字がやたらと躍るようになってきたあたりから、復興政策の内容がおかしなものへと変化したような気がする。

先に引用した福島イノベーション・コースト構想研究会が提出した報告書「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会 報告書」(平成26年12月)が、私にはその始まりだったように見える。

本来イノベとは何の関係もないはずなのに、ここでやたらとオリンピックが強調されている。

そして、福島12市町村の将来像に関する有識者検討会でも繰り返しオリンピックと福島復興との関係が強調され、この会議がとりまとめた提言(平成27年7月)では、避難指示解除が進むことでみなが避難元に帰ることができることになり、「家族そろって 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を応援することが可能となる」(17頁)のだと強調している。この文章はどういう意図があってここに入り込んだのだろうか。

福島イノベーション・コースト、再生可能エネルギー、東京オリンピック――これらがいったいどれだけ被災者の役に立つというのか。

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