この国はもう復興を諦めた? 政府文書から見えてくる「福島の未来」

復興の成果を自画自賛しているが…
山下 祐介 プロフィール

目につく復興事業の成果の自画自賛

私はこれまでいくつかの文章でこうした早期帰還を強要する状況を、「失敗不可避の政策」をゴリ押しする非常に危ういものと警告してきた。

そして現実に、1年前の平成29年4月に避難指示を大幅解除したにもかかわらず、人々がほとんど戻っていないことは、誰の目にも明らかな真実となっている。

問題は、そうした無理な政策が失敗する可能性が目に見えている中で、それをあらためて修正するどころか、なぜか逆に――むしろだからこそ?――これまでの政策の成功をたたえて、その成就を奉祝するかのような文言が目立ちはじめてきたことだ。

平成28年からの「復興・創生期間」の方向を示す「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成28年3月11日)こそが、まさにそうした姿勢で書かれたものである。

 

この基本方針の冒頭にある文章を見るだけでも、このことはよくわかるだろう。

(1)復興の現状
政府は、発災直後の平成 23 年7月に策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」において、復興期間を平成 32 年度までの 10 年間と定め、復興需要が高まる平成 27 年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付けた上で、未曽有の大災害により被災した地域の復旧・復興に向けて、総力を挙げて取り組んできた
地震・津波被災地域においては、これまで5度にわたって講じてきた加速化措置等の成果もあり、平成 28 年度にかけ、多くの恒久住宅が完成の時期を迎える。さらに、産業・生業の再生も着実に進展しており、10 年間の復興期間の「総仕上げ」に向け、復興は新たなステージを迎えつつある
福島の原子力災害被災地域においては、除染等の取組によって、空間線量率は、原発事故発生時と比べ大幅に減少している。また、田村市、川内村、楢葉町で避難指示の解除等が実施されるなど、復興は着実に進展しつつある
(「復興・創生期間」の方向を示す「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」、1頁。下線は筆者)

"政府のおかげで被災地は復興している。避難指示を解除できたので復興は着実に進展している。残りの5年は復興の「総仕上げだ」"――はたしてこの自画自賛は真実なのか。

私はここに、現実を見ず、失敗を認めず、都合のよいものばかりに目を向けて、「成果はあがっている」とうそぶき、さらなる失敗への道を歩んでいった先の大戦中の日本の状況に似たものを見て取る。

東日本大震災の被災者であり、復興の前線で関わっている知り合いが、しばらく前にこう漏らした。

「復興集中期間が終わったので、やっと復興できるなあって。……でも『創生』とか言って、まだ続くんですよ。一体いつになったら復興できるのか」

こうした被災者たちの声を尻目に、これまでの復興事業についての自画自賛は、この文書では頻繁に現れる。現政権の成果を過剰に強調し、「どうだ、これだけやったんだぞ」として現場に押しつけようと、まるで畏怖しているかのような文章だ。

いや、おそらく書いたのは官僚の方だろうから、政権が喜ぶよう、国民がこの政権の施策を好意を持って受け取るよう、ともかく印象づけたいと苦心して書いたものなのだろう。

そして、こうした権力へのおもねりや、へつらいのようなものが、随所で感じられるようになったのも、第3次安倍政権の前後からということができる。

そして今回私が一番、違和感を持ったのは次の資料だった。

資料 「復興の加速化に向けて」復興推進委員会(第19回)平成27年11月11日(会議資料1

これは、いま引用した「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」を策定するにあたって、その原案を復興推進委員会に示し、諮ったときの資料である。その1ヵ月前に行われた復興推進会議の内容を説明する部分が、私には何か腑に落ちない。

前述の通り、閣僚で構成する「復興推進会議」に対して、「復興推進委員会」は関係自治体の長と民間有識者によって構成される会議だ。

総理がお願いして招集し、諮問する委員会である。その会議に対し、「総理御発言」という文言は奇妙ではないか。

内閣総理大臣はあくまで行政の長であり、かつそれは国会議員でもある与党第一党の党首が収まるポストである。

要職であり激務であろうから、私も尊敬し、その仕事に感謝するが、国民との間に上下の関係はない。これはいったいどういうことなのか。

そして実は、この間の議事録などを丹念に見ていると、どうもある時期から、「総理の御指示」とか「大臣の御発言」とか、そういった妙な言葉遣いが(むろん文脈によっては、別に問題のないケースもあるのだが)繁く現れるようになっていった気がする。それもまた第3次安倍政権以降のようなのだ。

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