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人口・少子高齢化 ライフ 日本

35歳の野原しんのすけは還暦のひろし・みさえと「近居」するのか

「大都市移民2世」の人生という問題

いま、東京をはじめ大都市圏で急速かつ静かに、ある「家族のかたち」が広がっている。親の世帯と子の世帯が、都会ですぐ近所に別居する「近居」だ。

なぜいま、この「近居」が注目されているのか? 1988年生まれの政治学研究者・佐藤信氏が、のっぴきならない現代の家族事情を解き明かす。

実に合理的

30歳にもなると、周囲には結婚するのみならず、子どもを持つ友人が少なくない。もっとも、あくまで「少なくない」程度で、2人以上子どもがいるというカップルは少ないのが少子化日本の姿であろう。

しかし、いくら子ども1人でも共働き家庭が多数派の現在では、親世代のように家庭内ですべての面倒をみることができるわけはない。そこで日々ニュースが伝える待機児童問題がヌッと現れることなる。

3月は悲喜交交の声がこだまする季節だ。なかには保育園に落選しつづけ、泣く泣く仕事をさらに休む例も聞かれる。そんな過酷な環境のなかで、新米ママパパが頼るのが彼女/彼らの親に他ならない。

とりわけ子育て経験者の母親は強い味方だ。育休中、1人家に籠もって不安と闘うより、2人で取り組めばいかに気分が楽であることか。見守ってくれる人がいなくては、職場復帰もままならない。

地方の実家から、また外国人の友人のなかには海外から母親を呼び寄せる例もある。子育て世代への安心が提供されない現代日本にあって家族の存在はますます重要になってきている。

そんななか、ここ数年注目されているのが「近居」という住まい方だ。

 

子どもが病気のたびに遠方の親を何度も呼び寄せたり、もしくは親の元に送ったりというのは、交通費も含めあまりに負担が大きい。家事もできない旧時代のジイサンが実家に一人置き去りにされるという問題も生じる。

それならば初めから親の応援を頼りやすい距離に自宅を構えようという、いたって合理的な選択である。

いつしかドラマでも「前提」に

データによれば40代以下の夫婦では子どもがいると、世帯主の母親との同居・近居が多い。現代日本では世帯主は多くの場合夫であるから、妻の母親との同居・近居も含めれば、子育てカップルの親世代との同居・近居はさらに重要になっていると考えられる。

子どものために近くに引っ越すのか、近くに親がいてサポートが得やすいから子どもを産みやすいのか、おそらくその両方だろう。

こうした近居は同時に、将来の親の介護を想定したものでもある。

親の怪我のために遠方の親を尋ねるのは面倒だし、孤独死などということになってはまして困りものであろう。そんなわけで、親の近くに居を構えたり、親に自宅近くに住んでもらったりするわけである。

厚生労働省とタイアップするなど、なにかと話題の今期のフジテレビドラマ『隣の家族は青く見える』でも、深田恭子と松山ケンイチ演じる妊活に悩むカップルのもとに、孫の顔を見たい高畑淳子演じる夫の母がたびたび現れるシーンが印象的だ。

核家族における嫁姑問題というテーマは、何度もリメイクされている橋田壽賀子脚本のドラマ『となりの芝生』も意識されているのかもしれない。

しかし、両者が大きく違うのは、『となりの芝生』では姑の同居によって問題が生じる(同居しない限り問題は生じない)のに対して、『隣の家族』では近居が前提とされている点であろう。気づけば都会での近居は身近な存在になっている。

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