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なぜシリア内戦は終わらないのか?激化する3つの「戦争」

「イスラーム国」壊滅後の行方
末近 浩太 プロフィール

紛争を継続させる4つの要因

この3つの「テロとの戦い」は、今後も紛争を継続させていくものと思われる。

別の言い方をすれば、この「絶望」的な状況を大きく変えるような力学がシリアの国内にも国外にも見当たらない、ということである。

その要因として、次の4つを指摘できる。

第1に、ある陣営がターゲットにしている「テロリスト」が別の陣営の同盟者となっていることから、紛争が膠着状態に陥ることは避けられない。

すなわち、ロシアとイランに支援されるアサド政権は反体制諸派を、クルド人勢力を利用する米国はイラン(と潜在的にはロシア)を、そして、反体制諸派の一部と共闘するトルコはクルド人勢力をそれぞれ「テロリスト」と見なしており、事実上の三竦み(さんすくみ)になっている。

第2に、「テロとの戦い」には、本来的に出口戦略を立てにくい特徴があり、そのため長期化する傾向が見られる。

「テロリスト」の「殲滅」を目指すにせよ、「封じ込め」を目指すにせよ、長きにわたる戦いを余儀なくされる。

そもそも、シリアで展開されている三者三様の「テロの戦い」のいずれもが結局のところ旧来からの「テロリスト」をターゲットにしている事実が、そのことを物語っていると言える。

 

第3に、「テロとの戦い」は、恣意的な「テロリスト」の定義や「友敵関係」の設定を特徴とするが、それゆえに、逆説的ではあるが、「レッドライン(見過ごすことのできない状況・条件)」は堅固なものになる。

その「レッドライン」をめぐる安易な修正や変更、妥協や打算は、「テロとの戦い」それ自体の正当性を揺るがすことにつながるからである。そのため、和解や和平はおろか、当事者間の交渉すらも成立しない状況が続くことになる。

第4に、「テロとの戦い」に手を染めた者は、他の「テロとの戦い」の正当性を否定することが困難になる、という問題もある。

「テロリスト」の定義にまつわる恣意性を指摘したとしても、それはそのままブーメランのように自らの定義への批判として返ってくる可能性が高いからである。

こうした状況下では、残念ながら、アサド政権による反体制諸派の実効支配地域における壮絶な掃討作戦も、幾度となく浮上する化学兵器の使用疑惑――今や反体制諸派やトルコ軍までもが使用していると報じられている――も、シリア「内戦」を終焉に導くための決定打になり得ない、ということになる。

そして、悲劇は繰り返される。

〔PHOTO〕gettyimages

この紛争を駆動しているもの

冒頭で触れた東グータ地方での悲劇を受けて、国連安保理常任理事国は、2018年2月24日、シリア全土での30日間の停戦を求める決議第2401号を全会一致で採択した。

しかし、ロシアが難色を示すことで、その停戦の対象から「テロリスト」の掃討作戦は除外されることになった。つまり、国連安保理それ自体が、「テロとの戦い」を事実上認めたかたちとなったのである。

さらに、これにいわば便乗するかたちで、トルコもこの停戦決議を歓迎した一方で、シリア北西部でのクルド人勢力に対する「テロとの戦い」を継続する意思を示した。

シリア「内戦」が「もはやシリア一国にとどまらない紛争になった」と言われて久しい。そして、そのことが、紛争の複雑化と長期化をもたらしてきた。

しかし、ISの盛衰を経て、今のシリアの紛争を駆動しているのは、そのISが残していった「テロとの戦い」の呪縛であり、それによって増幅された「内戦」に関与してきたあらゆる勢力の剥き出しの欲望である。

そして、それは、政治的な立場の違いに関わらず、とにかく戦闘が終わることだけを一心に願うシリアの一般市民の意思を置き去りにし続けているのである。

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