ライフ 不動産

「住みたい街」人気の北千住を歩いてわかった厳しい現実

住民たちは「深みがなくなった」と…

リクルート住まいカンパニーが「住みたい街ランキング」の最新版を発表した。併せて発表された「穴場だと思う街(駅)ランキング」では、4年連続で北千住が1位となった。住みたい街としても、横浜、恵比寿、吉祥寺など全国区で知られるエリアに続き、23位に選ばれている。北千住に魅力を感じる人が増えてきた理由を、現地取材で探った。(写真/的野弘路)

 

「ガラの悪い地域」が変貌しつつある

北千住は江戸時代、日光道中と奥州道中と呼ばれた主要な交通路の宿場町として栄えた。その流れを受け、JR常磐線、東京メトロ日比谷線、同千代田線、東武伊勢崎線が乗り入れる線路網の要所で、2005年につくばエクスプレスが開通してからは、乗り換え駅としての利便性がさらに増した。

北千住駅前北千住駅西口、左手は北千住マルイ。下町の雰囲気はほとんど感じられない

とはいえ、北千住を含む足立区のイメージは昔からあまり良くない。「週刊現代」2016年3月5日付の記事は、足立・葛飾・江戸川区を「下町三兄弟」と名づけ、東京都民にとってのイメージをこんなふうに書いている。

「特に六本木、麻布といった成金タウンを擁する港区や、ベンツやポルシェばかり走り回る目黒区などの住民は、『北千住なんか、昭和のヤンキーの巣窟』『葛飾? 寅さん以外に何かある?』『江戸川って、どうやったら行けるの?』と、好き放題言っている」

「昔から『ガラの悪い地域』と見られがちな東京東部にあって、とりわけ足立区の刑法犯認知件数は、2006年〜09年のワースト1位だった。葛飾区はまだしも、江戸川区も足立区とほぼ同等の『犯罪多発地域』とされている」

帝京科学大学隅田川沿いには帝京科学大学のキャンパスが点在する(写真は本館)
東京藝術大学学生数は少ないものの、東京藝術大学および同大大学院の一部が北千住駅西口に

近年、こんなイメージが払拭されつつある背景には、大学の誘致があるようだ。2006年の東京芸術大学を皮切りに、東京未来大学、帝京科学大学、東京電機大学が相次いで千住キャンパスを新設。交通の便の良さも手伝って、遠方から通学してくる学生が一気に増えた。帝京科学大学のある学生は、最近の北千住についてこう語ってくれた。

「つくばエクスプレスのおかげで、茨城県の実家から毎日通っても苦になりません。学生が増えたせいか、ラーメン屋がたくさんあるのもうれしい。街の治安はどうかって? 昔はヤンキーが多かったらしいけど、いまは見かけませんね。ただ、夕方になると居酒屋のキャッチ(客引き)のお兄さんが多くて、けっこう強引なので女子学生たちがマジで怖がってる。あれがヤンキーの名残りなんですかね(笑)」

地元住民は「深みがなくなった」とも

学生が増えて街が若返り、新陳代謝が良くなって活性化する――そんな典型的なサクセス・ストーリーが想像されるが、実際はそう単純な話でもないようだ。

東京電機大学北千住駅東口至近に東京電機大学(右手のビル)を誘致

北千住駅東口すぐそばに東京電機大学がキャンパスを構えたため、駅周辺の商店街を歩く学生たちの姿は確かに目につく。しかし、昔からこの街に住む人たちは、学生が増えたことの恩恵をそれほど感じていないようだ。キャンパスそばで長く八百屋を営む住民はこう語る。

「学生さんは増えたけど、にぎわっているのは駅前や駅ナカの飲食店くらいで、商店街にはあんまり関係ないと思うね。全国どこでもそうなんだろうけど、昔ながらの肉屋、魚屋はみんな店を閉めちゃった。後継者がいないんだわ。ウチも昔からの近所のお客さんが来てくれるからなんとかやっていられるけど、学生さんが買ってくれるわけじゃなし、いずれ商店街ごと滅びる運命よ」

商店街の八百屋八百屋さんを使うのは相変わらず地元住民だけだという

北千住唯一の古書店店主もこう語る。

「いまの学生さんは本を読まないからね、大学を誘致してもウチには関係ないよ。本当は大規模商業施設を誘致するって話もあったんだけど、個人経営が多い商店街の反対でそれもナシになった。北千住が人気とか言われても、自分にはピンとこないね」

この古書店の周辺には、学生にフレンドリーなチェーンのファストフード店などがひしめき、一見にぎわっているように感じられるが、よく見てみるとシャッターを下ろした個人商店も少なくない。また、平日の午前中にもかかわらず立ち止まってスマホを操作する姿が数多く見られたが、声をかけてみると、学生やビジネスマンではなく、「ポケモンGO」のレアなモンスターを求めて集まってきた人たちだった。

ポケモンを楽しむ人たち古書店の周辺に佇む人たちは老若男女「ポケモンGO」に夢中

電機大そばにある老舗用品店の店員は、こんな本音を口にした。

「若い人は増えたし、その需要を当て込んでか飲食店も増えました。地元の商店街も、若い人たちと一緒になって街を盛り上げようといろいろ取り組んでいるのは事実だし、私も地元住民の会議やイベントに参加するようにしています。でも、正直なところを言えば、大学誘致をする前のこの街のほうが『深みがあった』と思うんですよね」

新メディア「現代新書」OPEN!