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「75歳から」にダマされるな!年金は早くもらうほど得をする 

いますぐ「繰り上げ受給」の手続きを 

再び、年金改変の議論が始まった。目玉は、75歳への繰り下げ受給が可能になることだという。年金の支給をなんとか先送りしたい――そんな政府の思惑が背景にある。やはり、繰り上げ受給が正解だ。

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2月16日、政府は新たな「高齢社会対策大綱」を閣議決定した。注目は、公的年金の受け取りを70歳以降に後ろ倒しできるようにする内容だ。

経済アナリストの森永卓郎氏は、政府が「年金70歳時代」に向けて動き出したと憤る。

「今回発表した大綱の裏には、現在65歳からとなっている公的年金の支給を70歳に切り替えるという意図が透けて見えます。

もちろん、政府は表向き、年金支給のタイミングを65歳以降に変更することは否定していますが。ただ、同じ大綱で、60代後半の約7割が働く社会を想定している。

これは、定年を延長させて65歳まで働かせ、最終的に年金支給を70歳からにするための環境を整えたということです」

現在、基礎年金(国民年金)と厚生年金の定額部分の支給開始年齢は65歳からで、厚生年金の報酬比例部分は順次引き上げられ、'25年までには65歳からになる。

基礎年金は現状でも繰り下げて受給することができる。70歳からの受給にすれば、65歳からの受給に比べて月額は42%アップする。75歳まで遅らせたときも同じ割合で増えると仮定すれば、受給額は84%も増える(対65歳時受給額比)。

現在の国民年金の受給額は年間77万9300円(保険料を40年納付した場合)だから、これが143万3912円にもなるわけだ。

これからは「人生100年時代」がやってくるという。100歳まで生きるとすれば、75歳から国民年金を受給すると、受取総額は約3728万円。一方、65歳から受給したときの総額は約2805万円だ。

その差は実に1000万円近くにもなる。単純計算なら、受給を遅らせたほうが得かもしれない。

政府も遅らせれば遅らせるだけ得かのようにアナウンスするが、ダマされてはいけない。そもそも年を取ってから、そんなにおカネが必要だろうか。実際は年を取るにつれて、おカネはどんどん必要なくなっていく。統計からも明らかだ。

今年発表された総務省統計局の「家計調査報告」('17年)によれば、世帯主が60~69歳の消費支出は平均月額29万84円(2人以上の世帯)。

対して、70歳以上の世帯は月額23万4628円だった。75歳以上の世帯に限れば、月の支出は21万5151円にまで減少する。

社会保険労務士の田中章二氏はこう話す。

「現在、公的年金を繰り下げて受給している人は、全体のわずか1.4%にすぎません。約6割が65歳からの支給を、約3割が繰り上げ受給を選択しています。

60歳からの繰り上げ受給を選択している人も全体の4%程度います。たしかに60歳からの受給だと月額は65歳からの受給に比べて、7割に下がります。76歳7ヵ月を超えて生きれば、公的年金の受取総額は65歳受給に比べて少なくなる。

ただ、考えてもみてください。年金を受け取っても、使えなければ意味がありません。受給開始を待っていて寝たきりになってしまったら、それこそ元も子もない。

私は、公的年金は老後の生活を充実させるものだと考えています。なので、私も夫婦で繰り上げを選び、年金を活用して、元気なうちに旅行をしようと決めました。

動けなくなったときに年金が月に1万~2万円多くなるよりも、元気に楽しく暮らすうちに使えるおカネを確保するほうがいいと考えたのです」