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センバツ高校野球開幕を前に思い出す、江川卓のスゴすぎる記録

速すぎて打てない…

江川卓のスゴすぎる記録

3月23日からセンバツ高校野球が開幕します。今年は90回目の節目の年にあたります。新3年生は2000年生まれの、いわゆる「ミレニアム世代」です。

センバツで44年間、破られていない記録があります。1973年、ベスト4に進出した作新学院(栃木)の江川卓さんがつくった60という奪三振記録です。4試合で60ですから、1試合平均15。バットに当たっただけで拍手が巻き起こったのは、私が知る限りでは江川さんくらいのものです。

私はこの時、中学1年生でしたが、関東の怪物を見ようとテレビにかじりついていました。投球練習を開始した瞬間、言葉を失いました。“目にもとまらぬ快速球”という表現が比喩ではなく、事実だったからです。

それは打席に立ったバッターも同じだったようです。

「イチ、ニ、サンのタイミングで合わせると振り遅れると思い、イチ・ニのタイミングで振ったんですが、それでも当たりませんでした」

そう語ったのは準々決勝で作新学院と対戦した今治西(愛媛)のトップバッター曾我部世司さんです。

四国の強豪・今治西はこの大会、優勝候補の一角にあげられていました。当時、四国の野球のレベルは関東よりも高く、「江川、何するものぞ」との空気がベンチ内にはみなぎっていました。

ところが、江川さんが1球投じただけで、ベンチは重い空気に包まれたと言います。結局、今治西は江川さんに20もの三振を奪われ、0対3で完敗しました。この試合で喫した8者連続三振は今もセンバツでの連続三振記録です。

 

余談ですが、今治西はよくよく三振記録に縁のある学校です。2012年夏には桐光学園(神奈川)のサウスポー松井裕樹(現東北楽天)に1試合22奪三振、10者連続三振という記録をつくられてしまいました。一度、“三振除け”のお祓いをした方がいいかもしれません。

江川さんに話を戻しましょう。準決勝で作新学院は名門・広島商高に1対2で敗れてしまいました。江川さんが2点も取られるのは珍しいことでした。

実は江川さん、前日、寝違えで首を痛めてしまっていたのです。

「部屋にいると報道陣からガンガン電話がかかってくるので、食堂の横のソファーで横になっていた。短いソファーだったため、頭がはみ出てしまい、首を痛めてしまった。起きると首が全然、廻らないんです。だから試合中は一塁への牽制もできなかった……」

夏の大会後、江川さんは全日本のメンバーに選ばれ、韓国に遠征しました。その時にチームメイトになったのが甲子園で優勝を果たした広島商のファースト町田昌照さんでした。

これまで江川さんの“快速球伝説”については、実際に対戦した多くの選手たちから話を聞きましたが、町田さんの次の証言に勝るものはありませんでした。

「牽制の練習をした際、あまりにも速いので僕はボールを見失いそうになりました。牽制球でも捕るのに一苦労するボールを、どうやって打てというのか……。牽制球があれほど怖く感じられたのは、後にも先にも、あの時だけです」

新生・ブルーバックス誕生!