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転職したけど「なんとなく先が見えちゃった」OLが取った意外な行動

A子とB美の複雑な感情【24】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第12試合「雇用」対決のBサイド。

今回のヒロインは、新卒で入った会社に嫌気が指し、見事転職を果たしたOL。収入アップし職場環境も良くなったものの、2年目にして「なんとなく先が見えて」しまった彼女が取った行動とは?

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ある意味贅沢な悩み

先日、高校時代のバイト先の友人たちと久しぶりに集まる機会があり、集まった5人のうち3人が黒髮、残り2人もかなり落ち着いたダークブラウンの髪色になっていることに改めて気づいた。高校時代、学校の校則や親の小言を無視して似合わない金髪や白メッシュにしていたのが懐かしい。

今、私たち30代半ばの女たちが金髪や白メッシュにしたところで、叱ったり小言を言ったりする人はいないのに(ダサいとかイタイとか辛辣な批評はくるかもしれないけど)、そうなってくるといかにも東洋人な顔に似合い、メンテの頻度も少なくていい暗い色の髪に落ち着くものだ。

それでも、高校時代に狭い狭い檻の中で小さな小さなくだらないルールに縛られていた頃は、どうにかしてその檻の隙間から外の世界に出てみたかった。檻は檻で十分楽しかったし、今思えばあんなに安全に無責任に生きられる場所なんてないと思うのに、なんでそんなに外に出てみたかったのかちょっと不思議に思う。

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人に言われるまでもなく髪を黒くして、人に言われるまでもなく寒い季節のスカートは長くしている私たちからすれば、何を意固地に金髪やミニスカにこだわっていたのか、という感じなのだが、それはすでにその檻から強制的に追い出された私たちの、ある意味贅沢な悩みなのだと思う。

檻から出たところで別に自分が誰か別の人間になれるわけでも、楽園のような自由な場所に行けるわけでもないし、むしろ檻から出て初めて檻の魅力に気づいたり、檻の中のルールが破るに値しないようなことだと分かったりするものなのは分かっている。

それでも私たちは、私たちを守りながら縛り付ける何かから、脱出したいと常に思ってしまう生き物らしい。それはもちろん、自分に価値を与え、社会の中で生きる場所と生きるためのお金や立場を与えてくれる、会社のようなものであっても。

 

ひとくちに企業と言ったって、日本企業もあれば外資系もあるし、大企業も中小企業もベンチャー企業もある。研究職と営業職では、商社とマスコミでは、経理部門と技術部門では、業務内容も全然違う。在宅勤務OKの職種もあれば、産後は時短で働く人もいるし、一般職や地域総合職などで活躍する女もいる。

それでも、会社にいるという一点において何かしらは共通していて、それは中から見るとまるでつまらない檻のように見えて、外から見ると強大な力のように見る類のものなのだろうと思う。実際、業務内容や給与額などにかかわらず、外に出てみたいとちょっとも思わない人は少ない。