薬のパッケージをそのままIoT化

一方で、薬のパッケージにそのままセットできる「服薬支援モジュール」を開発したのが大塚製薬だ。脳梗塞再発抑制薬「プレタールOD錠100 mg」が入った包装容器に取り付ける専用の通信機能付き服薬支援モジュールをNECと共同開発した。薬を飲む時間や服薬記録は無料で提供される専用アプリで管理する。
 
朝と夜の決まった時間にLEDが光って服薬を促す。パッケージから薬を取り出すと、LEDが消灯し、薬を取り出したタイミングがスマートフォンアプリに送信される。アプリから、医療関係者や家族に薬を飲んだことを通知することも可能だ。また、医療関係者は、患者のスマートフォンから履歴を読み出すこともできる。

大塚製薬株式会社「プレタールアシストシステム」概念図

今回対象となる薬は血液が固まることを防ぐ抗血小板剤の一種で、副作用や事故に特に注意が必要で、安全管理のため特に専門家による薬学的管理の関与が必要な医薬品である「ハイリスク薬」に指定されている。

正しく服用できなければ命に係わる薬だが、大塚製薬によれば「うっかり忘れ」「自己判断で中止」等により服薬率は半年で約5割まで低下するという報告もあるという。

決まった時間に薬が取り出されていなければ、医療関係者や家族が電話やメールで服薬を促すこともできる。

飲んだことも確実に記録するセンサー内蔵錠剤

ここまでに紹介した製品は、「いつ、何を飲むか」を管理し、記録するものだ。薬を飲んだかどうかは、薬が正しい時間に取り出されたかどうかで判断している。だが、本当にその薬が体内に入ったかどうかは分からない。

大塚製薬と米Proteus Digital Health社は、体内に薬が入ったことを確実に記録する世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite)」を開発し、FDA(米食品医薬品局)の承認を受けた。

「エビリファイ マイサイト」Photo by Proteus Digital Health

錠剤の中に組み込まれた極小センサーが胃に到達すると、胃酸で電池が動作して(レモン電池と同じ原理だ)、センサーが動作して信号を出す。

これを患者の身体に貼りつけたセンサーで検出し、確実に体内に薬が入ったことを確認する。検出器からスマホアプリに信号が送信されて服薬が記録される。センサーは便と一緒に体外に排出される。

飲み忘れを防ぐ仕組みと組み合わせて利用すれば、記事冒頭で挙げた5つのポイントを完全にカバーできる。

服薬管理は高齢化社会の大きな課題

高齢化社会の到来を受け、厚生労働省では「地域包括ケアシステム」として、なるべく高齢者は医療機関ではなく自宅や地域で生活・療養できる体制を促進するとしている。在宅医療のためには、正しい服薬管理が不可欠だ。

また、そもそも、「持病の薬」を正しく飲み続けられれば、日常生活には支障なく暮らせる高齢者も多いはずだ。

IoT薬箱で課題となるのが、服薬情報の管理だ。個人情報保護法では個人の病歴を「要配慮個人情報」として、本人の同意を得ることなく取得してはならないと定めている。服薬情報が分かれば病歴は容易に推測できる。センサーの通信、アプリやクラウドサービスのセキュリティには高い堅牢性が求められる。

とはいえ、高齢者自身のQoL向上や介護負担の軽減のために、IoTを活用した服薬支援ソリューションは今後普及していくことは間違いない。

今までは記憶と人力に頼って解決していた課題をIoTでスマートに解決できる事例が、身の回りにないだろうか。そこには新しいビジネスの種がきっとある。

 


【本文中で紹介した製品・サービス】
・クラリオン株式会社、ケアボット株式会社「服薬支援ロボ」
・エーザイ株式会社「eお薬さん」
・凸版印刷株式会社「IoT薬箱実証実験」 *報道発表資料
・大塚製薬株式会社「プレタールOD錠100 mg」 *報道発表資料
・大塚製薬株式会社「エビリファイ マイサイト」 *報道発表資料