「用法・用量を守って正しくお使い下さい」ーー薬のパッケージや使用上の注意に必ず書いてある言葉である。健康になるための薬も、飲み方や飲む量を間違えてしまっては毒になる。だが薬を常に正しく飲むのは、意外に難しい。
そこで最近、注目を浴びているのが「IoT薬箱」だ。正しい服薬を可能にする最新技術について、Organnova代表/WirelessWire News編集委員の板垣朝子さんが解説する。

正しい服薬をするためのチェックポイント

そもそも「用法・容量を守って正しく薬を飲む」と一言で言うが、そのためのチェックポイントはいくつかある。この中のどれが欠けても、薬を正しく飲むことはできない。
 
1.自分は薬を飲まなくてはいけないことを覚えている
2.飲まなくてはいけないことを飲むべきタイミングで思い出す
3.その時どの薬を飲めば良いかを覚えている
4.飲んだ薬を確実に体内に入れる
5.薬を飲み終えたことを忘れず覚えている

 
並べてみると、「正しく薬を飲む」ためには記憶がとても大事だということがわかる。これが、特に高齢者の服薬が難しくなる理由だ。加齢に伴う記憶力の低下や認知症が、正しい服薬を阻む。
 
そのために大切になるのが、「服薬履歴の記録」とそれをチェックする人の存在だ。病院であれば決まった時間に出された薬を出された通りに飲めば良いが、自宅で正しく服薬できているかどうかの確認はこれまで家族や訪問ヘルパーなどに頼っていた。

IoTによる服薬支援とは、この「記憶」と「記録」と「コミュニケーション」をITの力で助けるものだ。

進化した「お薬カレンダー」

薬の飲み忘れを防ぐために従来から活用されている最も原始的でシンプルな仕組みが、「お薬カレンダー」だ。

縦に曜日、横に朝・昼・夕・夜の服薬時間をとったマトリックスに透明なポケットを並べ、それぞれのタイミングで飲む薬を入れて壁にかける。時間が来たらポケットに入った薬を飲めば、飲み方の異なる複数の薬を併用している場合でも正しく飲めるというわけだ。

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「服薬支援ロボット」は、このお薬カレンダーの機能をロボットで代替するものだ。Google検索してみると、複数社が提供していることが分かる。あらかじめ筐体内に薬をセットしておき、タイマーにあわせてアラームを鳴らして服薬を促すのが基本機能だ。
 
クラリオンと、セントケアグループのケアボット株式会社が共同開発した「服薬支援ロボ」は、朝・昼・夕・夜のそれぞれに対応した4色のケースが各7枚格納でき、1週間分の服薬に対応する。

クラリオン株式会社、ケアボット株式会社「服薬支援ロボ」

ちなみにクラリオンといえばカーオーディオのイメージがあるが、CDのオートチェンジャーの技術が、曜日と時間に合わせた薬のケースを外に出す仕組みに役立っている。4週間分の服薬記録が筐体に内蔵したUSBメモリに残る。

また日立は、クラリオンの「服薬支援ロボ」と接続して、服薬履歴データを管理できるクラウドサービスを提供している。医師、看護師、薬剤師などの服薬指導をする人や、ケアマネージャー、遠隔地にいる家族などが毎日の服薬状況をウェブで確認できる。