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女性宮司は認めない?有名神社の跡継ぎ騒動で見えた日本の大きな課題

いまこそ議論の時では

有名神社で起こった騒動

平安時代から宇佐神宮(大分県宇佐市)の宮司職を世襲で務めてきた到津家の末裔・到津克子氏(49)が、ナンバー2の権宮司を解任されたのは無効だとして神社本庁と宇佐神宮などを相手取り、地位確認と損害賠償などを求めた訴訟で、大分地裁は2月13日、解雇を有効とする判決を言い渡した。

一方で地裁は、到津氏が宮司などから受けたパワハラ行為を認定、未払い賃金なども合わせて約137万円の支払いを命じた。解任の手続きに不備はないとし、宮司の業務命令に従わないなど到津氏の勤務態度を問題にしての解雇有効判決だが、追い詰めた宇佐神宮側の責任も認めており、玉虫色の判決。控訴して高裁で争われることになる。

全国の神社数は約8万。八幡神を祭る八旛宮は約4万社で半分を占めるが、宇佐神宮はその総本宮として歴史と社格を誇る。世襲の宮司家を「社家」と呼び、自動的に承継されるのが一般的だが、宇佐神宮では神社本庁が任免権を行使、到津克子氏の宮司就任を認めなかった。

 

それどころか、16年2月、田中恆清総長が強権で子飼いの小野崇之・神社本庁前総務部長を送り込み、支配体制を確立した。小野宮司は、挨拶に訪れた宇佐の神職たちに「謝罪文」への署名を要求、しかも神宮内にあった大分県神社庁宇佐支部の退去を求めるなど対決姿勢を露わにした。

田中総長はこれを支援。総長は宇佐、鶴岡八旛宮(鎌倉)と並ぶ三大八幡宮・石清水八旛宮(京都)の宮司なのだが、そこから大久保博範氏を権宮司に送りこんだ。外部支配体制の確立である。

宇佐市では、到津克子氏の裁判と並行する形で「宇佐神宮を守る会」が結成され、小野宮司と大久保権宮司の退陣を求める署名活動が展開されている。

筆者が入手した署名文

宮司の罷免を氏子の市民が要求する署名活動など前代未聞だが、請願理由の第一に「(両氏が)宇佐氏から続く社家である到津家をないがしろにしている」という点があげられており、宇佐市民の宇佐神宮と社家への崇敬の念がうかがえる。

この宇佐神宮騒動と、昨年末、国民を驚愕させた富岡八幡宮の宮司刺殺事件は同根であると考えられるだろう。富岡八幡宮は、創設390年を誇る東京・下町の神社だが、一度、富岡家の長男・茂永氏が宮司職を継いだものの、素行の悪さなどによって解職となり、10年10月からは長女・長子氏が神職の資格を取り、宮司代務者として取り仕切ってきた。

「代務」はいかにも不安定。宮司を選任、任命権のある神社本庁に任命具申する責任役員会は、何度も「長子氏を宮司に」と、具申するが「経験不足」を理由に拒否回答が続いた。それに焦れた長子氏と総代会は、17年9月、宗教法人神社本庁を離れ、単立の宗教法人となって宮司に就任。それが、「自分か息子を宮司に」と、一縷の望みをかけていた茂永氏の絶望感につながり、長子氏への骨肉の憎しみもあり、刺殺に至ったという。

宇佐神宮でも、責任役員会の「到津克子氏を宮司に」という任命具申を、神社本庁は「経験不足」を理由に蹴った。そこが紛争の始まりなのだが、「経験不足」は、社格の高い神社の宮司に女性を就けたくないという神社本庁執行部の空気があるのだろう。

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