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大炎上した東京都「結婚動画」なにがそんなに悪いのか

批判的な意見が多いけれど…
2月初めに東京都が発表した「結婚に向けた気運情勢のための動画」が賛否両論だ。少子化問題にくわしい東京大学准教授の赤川学氏が、動画のメッセージや批判的意見について考察する。

炎上した東京都「結婚動画」

1人の女性が生涯に産む子どもの数の平均値である合計特殊出生率の全国平均は、2016年で1.44。これに対して東京都の出生率は1.24。全都道府県最低であることはよく知られている。

日本の都市部で出生率が高くなるためには、未婚者の結婚が増えなけばならない。

さて、東京都が作成した「結婚に向けた気運情勢のための動画」(以下、結婚動画)が2月2日に公開された。

「東京2020オリンピック・パラリンピック、あなたは誰と観ますか?」と題された約1分の短い動画である。

これに対して、賛否両論の声が上がっている。

特に目立つのは、批判的な見解である。

たとえば「ダサい」「3000万円も予算をかける必要があるのか」「結婚を押しつけられているようで不快」「税金を使ってこんな動画を作る前に、安心して結婚できるような経済対策・子育て政策を考えるべき」などの意見があるようだ(AbemaTIMES女子SPA!などから主要論点を抽出)。

ダサい、かっこ悪い、云々の「個人の感想」はさておいて、「結婚を押しつけられているようで不快」という意見については、小池百合子都知事が、実質的な反論を行っている。

 

「結婚するかしないかは個人の自由であるし、自分の人生観に基づいて決めること」だが、「9割の方が望んでいてもなかなか一歩を踏み出すことができない。結婚を望む方々の明日への一歩を応援したい」と述べたそうである(AbemaTIMES)。

本当に9割の人が望んでいても結婚できないのかは疑わしいが(筆者コラム「家族はコスパが悪すぎる?結婚しない若者たち、結婚教の信者たち」参照)、都知事がいうような、「結婚や出産をするしないは個人の自由だが、できない人を政府が応援する」というスタンスは、現代日本の結婚・少子化対策にだけみられるものではない。

それは、先進国、特に少子化対策の模範国とされるフランスの出生促進政策や、第二次世界大戦時の日本の人口政策、いわゆる「産めよ殖やせよ」においてさえ共有される、いわば常套句なのである(詳しくは河合務『フランスの出産奨励運動と教育』、あるいは拙著『子どもが減って何が悪いか!』など)。

たしかにこの結婚動画は、「結婚を望む方々の明日への一歩を応援」しているだけであり、都民に結婚を強制しているわけではない。

小池都知事のこの論理に対抗するには、国家や地方自治体の子育て支援や少子化対策を根拠づけたり、批判したりできたりするような「正義論」が必要なのである。

それはそれなりの知力と労力を必要とする作業である。感情的な反発だけでは議論は深まらない。