村元哉中&クリス・リード組(photo by gettyimages)
オリンピック フィギュアスケート

日本代表の村元哉中&クリス・リード組が好調!アイスダンス観賞入門

ワインや絵画を楽しむような感覚で

スピード、エッジ、芸術性に注目

男子シングル日本勢の快挙に沸く、平昌五輪のフィギュアスケート。しかしまだ4種目中2種目が終わった折り返し地点。後半戦も見どころはたっぷりとある。まずは19日からのアイスダンス。シングルは見るけれど、ふだんはアイスダンスなど見ないよ、という方も、オリンピックを機会にぜひ注目してみてほしい。

そこで、ルールもまったくわからない、どう見たらいいの? という方のために、日本スケート連盟アイスダンスWG・五島千寿さんに見どころを解説してもらった。

――アイスダンスはルールが複雑で、シングル種目のジャンプのようなわかりやすい技もない。オリンピックでほとんど初めて見る、という方も、楽しめるでしょうか?

五島 そうですね。見るポイントを3つあげてみましょう。まず一番に、各組のスピード、滑る速さに注目してみてください。テレビで見ていると、後ろのフェンスが速く動くかどうかで、スピードのあるなしがわかります。

1日目のショートダンスは、やるべきステップなどが決まっていて全選手が反時計回りに滑るのでスピードが出しにくいかもしれません。でも2日目のフリーとなると、スピードのあるチームはすごい勢いでフェンスが動くのがわかると思います。

――まずは各組のスピードで、巧さが見分けられる。

五島 そう。そしてスピードに乗って、正確なエッジを踏むというのが、とても難しいんです。シングルと違って隣にパートナーもいるので、ふたりで動きも合わせなければならない。その動きの中で、2点目としてスケート靴のエッジ(刃)に注目してください。エッジがどのくらい大きく傾いているか。この傾きが深ければ深いほど、巧い。

アイスダンスはマクロな部分を見ようとすると、採点方法など、とても難しいです。さらに選手たちは失敗をうまく隠して見せないようにする……これもひとつの技術なので、アイスダンスの失敗はテレビで見ていても、非常に分かりにくいんです。だからまずは、スピードと、エッジの傾き。その2点に注目して、下位、中位と上位カップルの違いを見比べるだけでも、楽しいですよ。

マディソン・ハベル&ザッカリー・ドナヒュー組(photo by gettyimages)

――わかりにくい技術的な部分も、ちょっとした見どころを抑えれば楽しめますね。

五島 最後に注目していただきたいのは、アイスダンスの芸術性、演劇性です。フリーは特に、各組がこだわったテーマ、面白いキャラクターを見せてくれます。テレビでもテロップ・アナウンスなどで必ず曲名が出ますので、4分間のショートムービーのように楽しんでもらえればいい。

演じているキャラクターに注目したり、それぞれの物語に注目したり……。映画やオペラの曲も多いのですが、物語を知らなくてもいいんですよ。このふたりはこんなふうに愛を語っているんだな、とか、勝手に解釈して楽しんでしまえばいい。そしてどのショートムービーが好きだったか、みんなで見ながら、わいわい語り合っていただければと思います。

――私はどの組が好きだった、と。もう、好みでいいんですね?

五島 好みでいいんです。アイスダンス、ジャッジが採点する際は、細かく判断基準が決まっていますが、それを一般の方にわかっていただくのは、もうすごく難しいですから。それならば、演技そのものを楽しんでほしい。絵の鑑賞のように、ゴッホが好きか、ピカソが好きか、でいいんです。

 

一般の方からすれば、どちらもすごい芸術。差はわからないじゃないですか。そこを無理に理解しようとするよりも、どっちが好みか、で楽しんでいただければいい。あるいは、ワインのテイスティング。いろいろなワインを楽しむような感覚で、各組のキャラクターを味わってもいい。

トップの7組くらいまではほんとうにどの組もすばらしいですから、自分はどのカップルの作品が一番好きだったか、芸術鑑賞的に見てみてください。アイスダンス、家族や友達との「どれが好きだったか談義」は、ほんとに楽しめると思いますよ。

――自分の好みと、ジャッジの判断を見比べても楽しめそうですね。

五島 ジャッジのいちばんの仕事は、優劣をつけること以上に、作品に対して敬意を払うことなんです。選手たちも完全に自由に作品を作り上げているわけではなく、様々なルールの制約の下に作っています。フリーは頭の10秒以降はビートを入れなければいけない、とか、テンポが違う曲を組み合わせなければいけない、とか。

そんな制約の中で一生懸命作られた作品に、ジャッジは敬意を払います。その敬意が得点となって出る。「この限られた制約の中で、よくぞここまで作りました」と高得点が出たりしますし、「まだまだ。もっと想像を膨らませて作ることができたんじゃないの?」という気持ちも点数に反映される。そんな判断基準も頭においていただけると、おもしろいかもしれませんね。