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黒田総裁続投でも、すでに日銀は「ステルス引き締め」を始めている

副総裁人事が示しているもの

黒田総裁留任の意味

金融政策は、経済指標の数字を見て、単純に機械が決めるわけではない。政策担当者がその思惑をもって決めるものである。さらにそのベースには金融の現場や市場の状況があり、政治的な圧力もある。

4月8日に黒田東彦日本銀行総裁の任期が来るが、早々に再任されることがきまった。これでさらに5年、総裁職を務めることになる。

経済学においては、中央銀行の独立性は金融政策の基本的事項である。日本でも、1998年施行の新日本銀行法で再確認されている。

しかし、現在、黒田総裁以下、日本銀行は政府と一体化した金融政策を行っている。いわば政府の閣僚と同じ振る舞いである。

安倍政権が昨年10月の選挙で勝利してから、重要ポストの閣僚は留任しており、その観点から見て、日銀総裁もその1人として留任される見込みと考えられた。

また、安倍政権が進めるアベノミクスの主要政策が量的金融緩和であるので、ここで黒田総裁の継続がないと、アベノミクスの政策自体の失敗という事になってしまう、という事情もあるのだろう。

現在の2人の副総裁、中曽宏と岩田規久男の後任には、雨宮正佳日銀理事(62歳)と若田部昌澄早大教授(52歳)が候補として上げられている。

雨宮理事は、日本銀行なかで最も金融政策を理解していると筆者は認識している。まさに正統派であり、きちんとした金融政策の正常化を期待できる。

若田部教授は、早稲田大学政治経済学部の教授で、量的緩和推進のリフレ派といわれている。学位については、博士課程単位取得となっており博士号は持っていない、(長い間、博士号を持っていると誤解があった)岩田副総裁と同じである。

リフレ派といっても様々ある。あくまでも筆者の意見であるが、若田部教授は穏健派である。そのため、今後、金融緩和政策を過度に進めるこということはない、と考えている。

若田部教授の専門は経済史で、とくに金融危機の研究である。本欄で書いたように、今年は金融危機に陥る可能性があるが、その対応には適している。

 

日本の金融政策の行方

トランプ米大統領が、失業率等の指標に表れているように米国経済が好調であっても景気刺激策を投入し続けるのと同様に、日本も、金融政策の正常化や財政赤字の削減等は、アベノミクスからみれば非常にネガティブな感が拭えない。

実は各国経済にはトラウマがある、欧州ではインフレ、米国では失業(と株価下落)、日本では円高である。

日本は10年前と比べて、為替のGDPに与える影響は1/4になっているにもかかわらず、政治的には、そのようなトラウマの動きはいまだにある。

これは逆に危険な性質という事ができる。円安に向かうことが望ましいと考える傾向にあり、その方向に誘導する政策が受け入れられやすいのである。

現在、米ドルはトランプの政策のリスクで「悪いドル安」ともいわれている。もし日本が、財政問題が発生して円安になったときに、逆に喜ぶ方もいるのではないか。

もちろん、日本にとっては財政危機の方が重大である。そのため、中央銀行の独立性が大事だったのである。

金融機関で、内外で勤務し、さらに金融市場の分析を長年やっていると、特に経済政策は机上では分からないことがたくさんある。金融は現場なのである。

たとえば、近年、世界では、約10年に1回の割合で、金融危機が発生している。

1987年11月のブラックマンデーの時は西ドイツ(当時)が、インフレ率の上昇に対応するため、単独で金利を引き揚げたのが主因の1つであった。そのため、ブラックマンデー以降は特に先進国は金融政策においては基本的に協調することになった。

その後、97年のアジア通貨危機では、米国の金利引上げが同じく主因の1つとなり、その後、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は海外の新興国にも配慮するようになった。

2008年のリーマンショックの時には、先進国は協調して量的緩和政策を行った。

同様に、最近でも、先進国の中央銀行は金融政策を強調し正常化、つまり引き締めに向かわせている。FRBは中央銀行として2年前から利上げを行っている。日本も「当然」、その協調の輪の中にある。つまりは、引き締めに向かうのである。

欧州中央銀行(ECB)もこの方向で政策方針を決定する。ドラギ総裁は2019年10月がその任期である。後任は、ほぼ、インフレファイターのバイトマン・ドイツ連銀総裁(44歳)と予想されている。いうまでもなく金融政策は引き締めと考えられる。副総裁の交代は5月に予定されている。